仮説92:最終回バージョンエンディングについて

「ムーの白鯨」最終回のエンディングは通常とは違う特別バージョンでした。
今でこそ最終回バージョンのエンディングなど珍しくも何ともなく、作品によってはエンディング画像はおろか、登場キャラの多い作品ではキャラソンをエンディングテーマソングに使うことで毎回変えるという演出すら存在しますが、昔は全話通してオープニング・エンディングとも常に同じというのが一般的でした。
1年以上の長期放映作品ではエンディングテーマソングが変更になったりバージョン違いが存在する例もありましたが、普通は巨大ロボット物で主役メカがパワーアップしたなどの際に画像が差し替えになるくらいでしょうか。
あのファーストガンダムすら、特別バージョンのエンディングという演出は取り入れられていません。
「ムーの白鯨」の放送開始は「機動戦士ガンダム(ファースト)」の放送終了から2ヶ月余り後。まだガンダムブームは起きていませんでしたが、1975年の「宇宙戦艦ヤマト」に始まるアニメブームから下地はできていたのでしょう。
アニメファンの成長と共にその目が肥えてきて、これまでにない演出などが求められるようになってきていたのです。
これまでの勧善懲悪的なシンプルなストーリーから、敵側にも譲れない想いがあるというような深みのあるストーリーへ、「何だか分からない謎の力」を用いた戦いから、「それなりに説明可能な何らかの技術」を用いた戦いへ、そしてそれらを効果的に魅せるための新機軸の作画や演出の採用へと……。
2時間枠のスペシャルアニメがいくつか制作されたのも丁度この時期で、制作関係者が様々な演出を模索していたことが伺われます。

そんな中で登場した「ムーの白鯨」の最終回バージョンエンディング。本作がこの演出を取り入れた最初のアニメ作品かどうかは分かりかねますが、間違いなく最初期の作品の一つです。本作の後、「太陽の使者 鉄人28号」、「六神合体ゴッドマーズ」と続いた東京ムービー3部作がいずれも最終回バージョンエンディングを採用しており、シリーズのテンプレートという感じです。
その後も最終回バージョンのエンディングはアニメ作品の定番演出となり、今やエピローグシーンにエンディングテーマソングをBGMとして使うという演出も目新しさがなくなってしまいました。

「ムーの白鯨」の最終回エンディングは「翔べ!愛の世界へ」のサブタイトル通り、生き残ったマドーラ・剣たちが戦いのない新たな世界に向けて飛び立つ姿を思わせる映像に、しかもエンディングテーマソングも通常の1番でなく2番を用いて、そのまま最終回のエピローグとなっています。
そしてラスト、本作中で唯一無二、マドーラのヌードシーンを避けて通るわけにはいかないでしょう(はぁと)。マドーラのしなやかな背中からお尻、脚へと続く曲線がたまりません(鼻血)! ずっと足元まで届く薄衣をまとってボディラインが分からなかっただけに、ギャップ感が格別です(悶絶)! ……それだけに、隣の剣のヌードが余計です(アホ)。
後ろ姿とは言え、ヒロインのヌードを描くというのは、現在ならともかく当時としては非常に衝撃的なシーンで、制作側としてもかなりの冒険だったことでしょう(それまでにも1978年の「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」のテレサの例はあるが)。

東京ムービーとしても初の原作なしSFアニメ作品として位置付けられる「ムーの白鯨」。人気に結びつかなかったことは残念ですが、実験的・冒険的作品の面が多分にあり、それでいて丁寧に制作された、非常に良心的なアニメ作品でした。

戻る

inserted by FC2 system