仮説90:ケインについて

剣の前世、ケイン。3万年前、マドーラと愛し合った男です。
現代の剣と全く同じ年恰好をしていることから、その年齢は15歳前後と思われますが、そんな若輩でムー戦士の長を務めていたことからその実力が伺えます。
もっとも、長く続いたアトランティスとの戦いで年長の戦士たちが死に絶えてしまい、若い戦士だけで戦いに臨まなければならない事情があったのかも知れませんが。
それでも、4話でアトランティス兵士たちの間でもケインの名が知られていたことから見て、ムー最強戦士としての実力は本物です。
小説版では、当時のアトランティスの記録の中に、ケインを倒した者には二階級特進の栄誉が与えられるという特例が設けられた、という記述があり、いかにアトランティスがケインに苦しめられたかが分かります。

そんなケインを擁するムーも、強大なアトランティス帝国の前では風前の灯となってしまいます。
ラ・ムーはその時代に見切りを付け、アトランティスを異次元へ飛ばす最終手段に訴えます。それは、後世に地球の危機を先送りする方法でしたが、アトランティスから力の源・オリハルコンを奪い彼我の戦力差を埋める起死回生の一手でもありました。
その一手には、復活するアトランティスと戦う戦士を3万年後に送り込む対応がセットとなっていました。
結果、4人の戦士は3万年のタイムトリップに応じましたが、ケインだけが最後までアトランティスと戦う道を選びます。
それは一つには、愛するマドーラと別れたくないという心理もあったことでしょう。

ラ・ムーも一人の父親です。マドーラをアトランティスとの戦いに巻き込むことなく、マドーラをケインに託して他の戦士たちと共に3万年の時の彼方へ旅立つとの選択肢もあったはずです。それをしなかったのは、ケインがアトランティスとの戦いに不可欠な存在だったからでしょう。
結果的にケインはアトランティスとの戦いの中で消息不明となり、ケインを喪ったマドーラは人間の肉体を捨ててアトランティスとの戦いに身を投じることになります。
9話で明らかになったところでは、ケインはアララト山麓に辿り着いていました。
小説版では更に、学がトルコの図書館で見つけた「東へ向かった男」の伝説について触れられていました。
曰く、アララト山麓に偉大な一人の男が降り立って住みつき、やがて飢饉になった時、多くの民を導き東へ向かった、という……。
他の4人は3万年前と現代とでは魂は同一でも基本的に血縁関係はないと考えるべきです。
しかし剣だけは、魂は勿論、肉体的にもケインと血縁関係――子孫だと考えられます。
そのケインの血族がいつ頃、日本に到達したのか……? 想像するしかありませんが、剣が生粋の日本人だったと思われることからすると、それほど最近の事とは思えません。
日本人という民族がいつ頃成立したのかは学術的に諸説あるでしょうが、恐らく縄文時代か弥生時代、あるいは古墳時代……それくらいの時代の話ではないでしょうか。
そしてそれから現代に至るまで、様々な時代において、ケインの魂は各時代の英雄として生を受けたこともあったでしょう。手近な例を挙げるなら、ヤマトタケルや源義経……織田信長まで時代が下ると家系がはっきりし過ぎるかも知れませんが……。

ところで、ケインというムーでも突出した戦士の存在について、あくまでも個人的な意見ですが、彼はアトランティスの血を引いた人物だったのではないか、というのはいささか想像が過ぎるでしょうか?
例えば、3万年前、ラ・メールが人質としてアトランティスに取られた際に、人質交換の名目でアトランティスから出されたゴルゴス・プラトスの弟・ケインという可能性です。
ザルゴンは人質に出した三男を初めから見捨てる気で、ラ・メールを盾にムーに降伏を迫る。一方、ラ・ムーはアトランティス皇子のケインを手にかけることなくムー人として育てた……。
成長したケインはムーを護ってアトランティスに立ち向かう戦士長となり、やがてラ・ムーの娘・マドーラと恋に落ちる……。
もしそうだとすると、剣とプラトスとの対決は3万年の時を隔てた兄弟対決だったことになります。
……というような展開も最近の作品ならあり得たかも知れません(笑)。

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