仮説85:各話分析(25)
『決戦!ラ・ムー対ザルゴン』について

前回でプラトスの起こした反乱は鎮圧されたらしく、今回の冒頭ではザルゴンの側近であるゴルドはなかなか調子の良いことを言っています。
「五大陸に配置した基地建設作業は順調に進んでおります」
「今や地球はザルゴン様の思うがままでございます」
実際、生き残った旧世界の人々はアトランティスに捕えられて奴隷として扱われており、残るは剣たちムーの残党のみという状況です。

その剣たちは、海上でプラトス、ラ・メールの死を悼んでいました。そこを急襲するアトランティス戦闘機群。
アトランティス本国部隊が前線に出てくるようになって初めてのムーバルでの戦闘、その乱戦の中、譲のムーバルが重戦闘機の大口径ビームを受けて大破、譲は重傷を負います。負傷した譲を抱え、白鯨で海底神殿に退避する剣たち。
しかし、そこを更に爆撃隊のローラーシフトでビーム攻撃するアトランティス軍。
3万年の時を越えて残ってきた海底神殿も、外壁をビームで貫かれ遂に海没してしまいます。
白鯨に退避してかろうじて生き残った剣たちは、帰るべき場所を失った怒りに燃え、爆撃隊に反撃。そのままアトランティスに向けて進撃します。
皮肉なことに、これは3万年前にラ・ムーが避けようとした、ムーとアトランティスの力の対決に他なりません。

一方、爆撃隊全滅の報に、怒りにまかせてゴルドを斬殺するザルゴン。それを見た周囲の将兵たちの反応は、明らかに彼らの心がザルゴンから離れつつあることを示していました。
反乱は鎮圧されましたが、プラトスがアトランティス人民に問うた帝国のあり方に対する疑問は人々の心に燻り、士気を確実に下げていたのでしょう。
ストーリーのパターンとしてはいわゆるスーパーロボット物の類型となる「ムーの白鯨」ですので、白鯨とザルゴンとの対決へと戦いが収束してゆくことは避けられませんが、ここでプラトスの率いた反乱軍残党の力を借りて戦うくらいの演出はあっても良かったと思います。
そういえば、18話で信と学がこんなことを語っていました。
「……アトランティス人の中に平和を望む人たちの輪が広がって……戦いは終わる……」
当時の意図とは違いますが、それを現実化した展開というのも面白かったでしょう。
例えば、アトランティス軍が次々にザルゴンに反旗を翻して白鯨と共に進軍し、それに対してザルゴンはオリハルコンパワーを解放して反撃。自軍を自らの手で壊滅させたザルゴンと白鯨が直接対決……といった流れです。
まあ、ストーリーに絡まないだけで、反乱軍残党の存在によって白鯨への攻撃が弱体化していたことはあり得る話です。
ともあれ、例えこの戦いがザルゴンの勝利に終わっていたとしても、その先には発展した未来などなかったのではないでしょうか。
どう考えてもその将来は、誰一人いなくなった王宮の中で、孤独に玉座に座るザルゴンの姿しか想像できません。

それでも次々と出撃してくるアトランティス軍を前に、ラ・グリルの力を信じて白鯨で帝国中心に向けて突撃する剣たち。
結果的に背水の陣を敷くことになったことと、アトランティス側の士気低下が相乗効果を発揮したのか、一気にグレートパレスに肉薄、熱球ビームを一斉発射してダメージを与えます。
それに対してオリハルコンパワーの直接攻撃を放つザルゴン。勝利を確信して高笑いするザルゴンの姿は、鎧の鋲部分の色が通常と違っていて、何となくガマガエルを思わせるような一種異様な雰囲気を醸し出しています。
この鎧の鋲の色、単に色指定ミスと考えるべきでしょうが、図らずも狂気に走るザルゴンを表現する演出的効果となっています。
その強力な攻撃を受け続けながら、剣たちは白鯨でグレートパレスに体当たりを敢行します。
前回、プラトスがグレートパレスを占拠した時にザルゴンの側近が、
「この中には、オリハルコンパワーを制御するシステムがセットされております。万一、オリハルコンパワーシステムに狂いが生じますと、何もかもが……」
と言っていましたが、具体的に何が起きるのかは明言されていませんでした。
そのシステムの狂いがここで生じたのでしょうか。画面を見る限りでは、アトランティス大陸が海没してゆくように見えます。
ラ・ムーが危惧した通り、ムーとアトランティスの力の対決は、地球そのものを滅ぼす寸前まで追い込んでしまったわけです。

ラストは自ら要塞に搭乗して出撃してくるザルゴンと、剣たちを操縦カプセルごと脱出させてそれに対峙するラ・ムー。
今回の仮題は「アトランティス決戦」で、いずれにしても最期の決戦を前にしたふさわしいサブタイトルです。物語はクライマックスに向けていやが上にも高まります。

戻る

inserted by FC2 system