仮説83:各話分析(23)
『反逆者、プラトス』について

前回、女帝コンドラの生命と引き換えに、遂に地球帰還を果たしたアトランティス帝国。
大陸の着水によって発生した巨大な津波が世界中を襲い、イースター島も海底に没する姿が描かれます。
念願の成就に沸くアトランティス帝国。しかし、母を失ったプラトスの心には虚しさがあるだけでした。
地球から醜い戦いをなくすために戦ってきたはずのこれまでの行ないを、ラ・メールと自問自答するプラトス。
「私は、アトランティスが地球に戻ったとき、地球に戦いのない平和な世界が来ると信じていた……だからこそ私は戦ったのだ。だが、それは間違っていた。私たち二人がかつて宇宙から見たあの美しい地球の姿も、我々と真の平和を築き上げるはずだった地球の人々も、今はほとんど残っていない……」

その頃、剣たちは海中からアトランティスへの接近を試みていました。しかし大陸周辺には既に濃密な機雷原が敷設され、行く手を阻んでいました。
たちまち弱気に襲われる学でしたが、心を合わせて立ち向かう決意を固める一同でした。

一方、アトランティスではザルゴンがプラトスにラ・メールの処刑を命じていました。
「父上、酔っておられるのでは……悪ふざけはお止めください……」どこか覚悟はしていたのでしょうが、プラトスにはそう返すのがやっとでした。
「ラ・メールはラ・ムーの娘だ!今まで我々アトランティス帝国に屈辱を与え続け、お前の母や、兄までも殺した憎っくきラ・ムーの……八つ裂きにしても手ぬるいわ! お前に殺されるのがせめてもの情けじゃ」
あくまで非情に言い放つザルゴン。
「プラトス、ワシはお前が我が帝国の後継者として生きる、その証が見たいのだ。愚にもつかぬ愛とやらにおぼれているわがままも今日までだ。さぁ、アトランティス人民の前で、証を見せてやれぃ!」
このときのプラトスの心情はいかばかりだったでしょうか? 信じていたアトランティスの正義も幻と消え去り、無差別に人々を殺し、緑の大地を焼き尽くした側に加担したという事実の中で、なおも帝国に忠誠を誓って生きるのか……しかも、そのためには愛するラ・メールをその手に掛けねばならない……

剣たちが海中からの侵入を諦め、白鯨で上空からのルートに切り替えてアトランティス中枢部の上空に達したとき、プラトスは発砲します。
プラトスとラ・メールの関係を剣たちがどの程度把握していたのかは分かりません。
11話でプラトスがラ・メールを助けに駆け付けたのを始め、16〜17話でプラトスの傍にラ・メールがつき従っていたこと、18話でもプラトスがラ・メールを救出したことから親しい間柄であることは察しがつくはずです。
とはいえ、アトランティス帝国の皇子であるプラトスが、ラ・ムーの娘であるラ・メールを最終局面で助ける蓋然性があるとまで確信はできなかったはずです。
従って、プラトスが発砲した後、ラ・メールが倒れる姿を見て一同が絶望にかられたのも無理はありませんでした。
しかし、プラトスが撃ったのはラ・メールを戒めていた鎖でした。そしてアトランティス人民の前で高らかに宣言するプラトス。
「聞けぃ!アトランティスの民よ!我が兄を、そして母をも犠牲にして我らがアトランティスが得たものは何だ!?それは、名誉でも誇りでも繁栄でもない、愛と平和を阻む悪魔の心だ!そして今、アトランティス人として生きようとしているこのラ・メールまでも殺そうとする、帝王ザルゴン!あなたの作る世界は悪魔の世界、悪魔の帝国だ!」
衝撃的な発言でしたが、この時点でプラトスは孤立無援、アトランティスの大軍からラ・メールを護って戦わざるを得なくなります。
雨のように放たれるビームにプラトスが、そしてラ・メールが、負傷して倒れます。
そこを救ったのはムーバルに搭乗した剣たちでした。
プラトスは宿敵である剣にラ・メールを託すと、自らは大軍に突進することで敵の目を引き付け、ラ・メールを逃がします。

海底神殿にたどり着いたラ・メールでしたが、傷の手当てを受けただけでアトランティスに戻ろうとします。
「私のために、父であるザルゴンさえ裏切らねばならなかった、あの人がいるから……」
プラトスが自らを犠牲にしてラ・メールを護ろうとした時点で既に二人の想いには気付いていたでしょうが、この言葉で剣たちはその認識を確実なものとしたのでしょう。
「心から愛しているの。だから行かなければならないの、例え死が待っていようとも……。マドーラだってそうすると思う。剣、あなただって、みんなだって……そうすることが、今日まで悔いのない生き方をしてきたという私自身への証になるの。分かって、お願い……」
それでもなお反対するマドーラでしたが、ラ・ムーの言葉にラ・メールの決意を変えられないことを悟ります。
「ラ・メールを行かせてやってくれ。愛は誰にも止められはせぬ強い力じゃ。愛は何にも勝る尊い心……例え命の火が消えようとも、愛の炎は燃え続ける……ラ・メール、行くがよい。自らの心に忠実に生きるのじゃ……」
頑として自分がラ・ムーの娘であることを認めようとしなかったラ・メールでしたが、自分の意思を認め受け入れてくれるラ・ムーという存在を、ここで初めて父として認めたのでした。
そんなラ・メールを、剣は危険を冒してアトランティスに送り届けます。

その頃、捕えられたプラトスは激しい嵐の中、処刑台の上に戒められていました。
明日の日の出と共にプラトスの処刑執行を宣告するザルゴンの非情な言葉が処刑場に響き渡ります。
今回のサブタイトル、仮題時点では「明日に処刑を!」となっており、ストーリーはいやが上にも盛り上がります。

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