仮説82:各話分析(22)
『女帝コンドラの死』について

今回、アトランティスは既に地球帰還目前という状態になっています。
前回、アトランティス大陸と接触した段階で学が割り出したデータによると、地球まで40日以内に到着するとのことでした。当然、白鯨は幾度となくアトランティス大陸に攻撃を試みたものの、大したダメージは与えられなかったということになります。
このとき、地球はアトランティス接近の余波を受けて大津波、竜巻の大量発生、隕石の集中落下とそれに伴う大火災と、壊滅的な状態となっていました。
本来、アトランティス大陸くらいの質量では地球に天変地異を引き起こすようなことはないはずですが、大陸を移動させてきた反重力エンジンの影響が加わっていたのかも知れません。
あるいは、大陸の住人は普通に生活していることから地球上と同等、1Gの人工重力が施されていたと考えられますので、その影響ということも考えられます。
また、大陸を地球に軟着陸させるのに地球の重力は大きな障害になりますが、もう一つ大きな問題として、『ロシュの限界』があります。
つまり地球に一定以上の距離まで接近すると、その重力に起因する潮汐力で大陸は破壊されてしまうのです。地球の場合、その半径の3倍の距離と言われています。
アトランティス帝国の科学者陣がそれに気付かないはずはありませんから、大陸の崩壊を防ぐために全体をシールドするなどの対策を取っていたと考えるべきでしょう。その影響が地球上に及んで異変を引き起こしていた可能性もあります。

さて、正面から大陸に挑んでも敵わないことは既に分かっているので、剣たちもうかつに手が出せない状態でしたが、学の発案で、地球への着陸態勢に入ったアトランティス大陸の逆噴射ロケットを攻撃するという策に出ます。
余談ですが、このときが「オーロラビーム」という名称の初出でした。そう言えば、熱球ビームの名称が出たのもやっと20話に入ってからでした。派手な戦闘シーンを前面に押し出した作品ではないとは言え、ずっと武器名が無名のまま続けていたというのはちょっと意外です。

それはともかく、逆噴射ロケットに損害を受けて危機に陥るアトランティス大陸にあって、プラトスは出撃を進言、その代わりにラ・メールの助命を嘆願します。
しかし、ラ・メールへの愛を訴えるプラトスをザルゴンは一笑に付し、代わってコンドラに出撃を命じます。
特に明言はされていませんが、台詞から察するにコンドラにとって二度と生きて帰れない捨て身の出撃です。
「アトランティスの人間に愛はいらぬ。親子の愛と言えどもだ。ただ力だ、力だけを信じろ」
あくまで非情なザルゴンに反発を覚えるプラトス。
サイボーグとしての正体を晒したコンドラは自らオリハルコンパワーを浴びて巨大化、宙を舞ってその身に宿したオリハルコンパワーを放ち白鯨に止められた逆噴射ロケットを次々と再起動、更に白鯨へと迫ります。
必死に迎撃するも、オーロラビームでは効果なし、熱球ビームも単発では致命傷にはなりません。
体当たりすべく突っ込んでくるコンドラに、熱球ビームの一斉発射を叩き込み、かろうじて撃退に成功します。もしかすると、コンドラ自身の活動限界が来ていたのかも知れません。

白鯨はかろうじて勝利を収めたものの、アトランティス大陸の地球帰還を阻止することはできず、再び戦いの舞台は地球に移ることになります。
ザルゴン以下、アトランティス全土が地球帰還に沸く中、母・コンドラを失ったプラトスには虚しさだけが残っていました。
「兄上に続き、また母上が死んだ……このような死を犠牲にしてまでなぜ……何のためにこれまで戦ってきたのかさえ、私には分からなくなった……これほどの犠牲を払って、なぜ地球へ戻らねばならなかったのか……」
7話で「戦いに犠牲は付きもの」と言っていたプラトスでしたが、所詮は温室育ちのお坊ちゃん、自らは常に安全な場所にいる上から目線の認識で、自分やその身内に犠牲が出ることなど考えてもいなかったのでしょう。
いや、考えてはいても、本当の意味で理解してはいなかったのでしょう。それが肉親を失って戦いの後ろにある非情な現実に打ちのめされたのでした。
プラトスのその想いは、やがて決定的な行動へと繋がってゆくのです。
今回のサブタイトルは仮題でも「女帝コンドラの死」で、これ以外はあり得ない、そのものズバリのサブタイトルです。

ところで、今回の地球帰還体勢を狙っての攻撃では、ムー側は致命的なミスを犯していました。
逆噴射ロケットを攻撃することで大陸は減速できず、炎に包まれました。全大陸にダメージを与えるというこの戦術は非常に効果的でした。
しかし戦略的に見ると、その先に待ち受けているのは、アトランティス大陸の地球との激突です(汗)。
惑星間航行速度のまま激突するわけではありませんが、何しろオーストラリア大陸に匹敵する巨大天体です。大気圏で燃え尽きるとは考えられず、地上に及ぼす影響は計り知れません。
作戦が失敗することで地球は守られたわけで、意図したわけではないでしょうが、コンドラは結果的に地球の危機を救ったと言えます(汗)。

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