仮説81:各話分析(21)
『戦士、ラ・メールの悲劇』について

前回、アトランティス最強部隊を撃破した剣たちは、いよいよアトランティス大陸に乗り込みます。
対するアトランティス側は、白鯨を引きつけて一気に殲滅する作戦です。
まず、妨害電波を照射することにより白鯨のコンピューターを乱し、外部情報を遮断。それでも構わず突き進む、相変わらず猪突猛進の剣は、目前に現れたアトランティス中枢へ攻撃を敢行しようとするも、あっさりとバリアに阻まれ集中攻撃を受けることになります。
まず岩山に隠されていたビーム砲群からの集中砲火。それをバリアで防ぎつつ転進するも、オリハルコンパワー砲による人工竜巻攻撃が襲います。
これまでに多用されてきたオリハルコンパワービーム砲に比べると大した威力ではないですが、フルパワーで使用しては自国にも多大な損害を与えかねないので、やむを得なかったのでしょう。
竜巻に巻き込まれて山に叩きつけられながらも致命傷に至らない白鯨の防御力は大したものですが、更に周囲の山々に配置されたビーム砲群からの集中砲火。加えて地上の噴火口にカモフラージュされたビーム砲群による弾幕に晒されつつ、かろうじて大陸を離れることができました。
攻撃には防御の三倍の兵力が必要、というのはよく言われることです。これまでのように前線基地から発進した部隊のみを相手にしていた戦いと比べて、敵陣での戦いは移動能力を持たないがゆえに戦闘に参加できなかった部隊をも相手にしなければならないという点だけ見ても、攻撃側が不利となります。
地上兵力から逃れても、今度は航空兵力による追撃戦が始まります。この攻撃も半端ではありません。
状況に応じてアトランティス大陸全土からの出撃が可能というアドバンテージを生かし、これまでにない数にモノを言わせての飽和攻撃。
しかも対白鯨用に編成されたと思われる、重戦闘機群の攻撃と、10話以来出番のなかった爆撃機の大群による大口径ビームの集中攻撃。
しかし、対する白鯨も宇宙船形態に変身して得た攻撃力は半端ではなく、連射の利く7連装熱球ビームにより、戦闘機・爆撃機群を次々に粉砕してゆきます。

思わぬ苦戦に業を煮やしたコンドラは、切り札であったラ・メールを使っての囮作戦を決行します。
初めから白鯨を狙い撃たず、囮を使って攻撃ポイントにおびき出すことから考えても、オリハルコンビーム砲では高速移動する小さな目標に命中させるのは難しいことが分かります。
さて、ラ・メールがラ・ムーの娘であることが明らかになり、動揺するラ・メール、そしてプラトス。
プラトスにとっては兄・ゴルゴスの仇であるラ・ムーの娘ということで、ラ・メールを見るその目は明らかに『敵』に対するものでした。
しかし、一瞬の後にはあっさりと割り切ってしまって、いささか拍子抜けという感じは否めません。自分の愛する女性が敵の娘だと知ったら、普通はもっと動揺するでしょーが!
それはともかく、自分がラ・ムーの娘だという事実はラ・メールにとって決して認められない、自身のアイデンティティーを崩壊させかねないことでした。
ラ・メールは帝国に対する忠誠心を証明するために、自身を囮とするコンドラの作戦を受けるしかありませんでした。
もっとも、仮にこの作戦が成功していたとしも、ラ・メールは何らかの口実を設けて処刑されていたでしょうが……。
その後は深層心理の中でラ・ムーを父と認識したラ・メールが、最終的に白鯨を罠から逃がしてしまうというお約束の展開となります。

この回は、「ムーの白鯨」における悲劇のヒロインであるラ・メールが、その立場を明確にしたことがポイントです。
これまでは、ラ・メールを救おうという剣たちの意思は一方通行なもので、ラ・メール自身は囚われの身ではあるものの、そうされた理由は分かっていない状態でした。
いくら本人が否定しようと、自身が敵側の人間であるという事実は、ラ・メールにとってそれまでの処遇の理由をはっきりと認識させる出来事でした。
とは言え、ラ・メール自身は剣たちに助け出されたいとは思っていなかったでしょうし、剣たちとラ・メール、プラトスとの意識がすれ違っているのは否めません。

ところで、本編でのサブタイトル表示は「ラメール」となっていて、「・」が抜けてしまっています。特別長いサブタイトルというわけでもないので、これは単なる誤字と考えるべきでしょう。
また、仮題の段階では「恐怖のアトランティス大陸」となっていて、これは前回20話と同じです。
ま、前半におけるアトランティス大陸での戦闘の凄まじさは20話以上ですし、このサブタイトルは21話の方がふさわしいように思えます。
しかし、ストーリーに着目すれば、やはりラ・メールに重点を置くべきでしょう。

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