仮説79:各話分析(19)
『白鯨、宇宙に舞い立つ』について

この19話はアトランティス側から物語が始まります。前回、ザルゴンが復活して沸き立つアトランティスの民衆、というか兵士しかいないんですが……。ここだけ見ると前途洋々たるアトランティス帝国といった感じです。
その頃、地球では夜間に人目を盗むように白鯨は海底深く去っていくのでした。前回は軽く流した感がありましたが、アトランティスの隕石雨攻撃に晒された傷は決して小さくはなかったということでしょう。まして、それまでに長く続いた激しい戦いによって受けたダメージが蓄積していたことは想像に難くありません。
朝、白鯨がいないことに気付いた剣たちは付近を捜索するものの、発見することはできません。
一方、アトランティスではラ・メールが突然捕らえられていました。皇子であるプラトスが解放を訴えても、命令を下したコンドラは聞く耳を持たず、事情を知らないプラトス、ラ・メールはとまどうばかりです。
そんな彼らの想いなどお構いなしに、ザルゴンは地球移住大改造計画を始動。手始めにアジア大陸を削り取り、暖流を北極へ流し込むためオリハルコンパワービームを撃ち込みます。
計画の順調なスタートに祝杯を挙げるザルゴン以下のアトランティス首脳陣でしたが、プラトスだけはその暴挙に怒りを覚えていました。
元々、どこか現生人類を見下し、常に上から目線で物事を語っていたプラトスでしたが、そこには彼なりの理想があったはずです。例えて言えば、
『歯向かうなら容赦しないが、服従すれば悪いようにはしない』
『アトランティスが地球を支配すれば、結果として地球に平和が訪れる』
『全体幸福のためなら、多少の犠牲はやむを得ない』
ところが、実際に起きたことは地球を破壊する暴挙。明確には描かれていませんでしたが、恐らく警告なしのビーム発射、住民を避難すらさせないまま大地もろとも粉砕したはずです。
「アトランティスの目的は、地球をいたずらに破壊し、人々を無差別に殺すことではない……!……父上は間違っている……」
前回、ラ・メールを犠牲にする作戦でアトランティスの正義に初めて疑問を抱いたプラトスでしたが、はっきりとその行ないを間違っていると断言した瞬間でした。
衛兵の制止を無視してラ・メールに会いにくるプラトス。
「俺はもう、父や母さえ信じられない……このアトランティスで信じられるのは、ラ・メール、お前だけだ……」
プラトスの心情をどれだけ理解していたのかは不明ですが、衛兵もプラトスの行為を黙認する辺り、細かな事情は分からないながらも、ラ・メールに対する理不尽な仕打ちに同情していたのかも知れません。

さて、その頃、剣たちはラ・ムーの声に導かれて「鯨の墓場」にたどり着き、そこで力尽き倒れていた白鯨が剣たちの力を得て復活、宇宙船形態へ大変身するというあまりにご都合主義の展開でアトランティスに決戦を挑むべく旅立つという流れとなります。
ま、サブタイトルを見た時点でこの結末は簡単に予想できるわけですが――仮題でも『白鯨宇宙に舞い立つ』となっており……読点の有無だけの違いです(汗)――この回で特に注目すべきなのは、剣たちは姿を消した白鯨を探し回り、最終的に白鯨が宇宙へ飛び出す能力を得て旅立って行くだけで、全く戦闘を行なっていないという点です。
戦闘行為としてはアトランティス側が地球にビーム攻撃を行なうものの、剣たちはそれを防ぐどころか攻撃があった事実すら知らなかったでしょう。
これはこの辺りからストーリーの重点が剣たちではなくプラトスとラ・メールへと移ったことを示しています。
実際、最終回の直前、24話までの主人公は剣ではなくプラトスであったと言っても決して過言ではありません。

ところで余談ですが、冒頭、海底に消えてゆく白鯨の操縦カプセルにはミューがおり、白鯨を探しているときも姿が見えないので白鯨と共に行ったのだと思っていましたが、皆が探し疲れて海岸で途方にくれている場面にしっかりミューが居るんですけど……?
海底に消える前に白鯨の中から出て皆のところへ戻ったのかとも思いましたが、鯨の墓場のシーンでは姿が見えず、白鯨が変身して皆が乗り込んだ操縦カプセルの中では、やっと再会したという感じでミューが再登場していました(汗)。
ま、ここは突っ込まない方が良いんでしょうね(笑)。

戻る

inserted by FC2 system