仮説78:各話分析(18)
『ザルゴン、悪魔の復活』について

「ムーの白鯨」第18話は『ザルゴン、悪魔の復活』。一目瞭然、3万年前から永眠状態となっていたザルゴンが復活するお話です。仮題でも『ザルゴン・悪魔の復活』と、「、」と「・」の違いだけで、まさしくこれ以外は考えられないというタイトルです。

前回、オリハルコンパワービームを白鯨に弾き返されたアトランティスでしたが、今回はオリハルコンパワーで隕石群の軌道を変えて地球に降り注がせるという作戦に出ます。
敵の手が届かない遠距離からの超ロングレンジ攻撃は戦術的に理に適っています。
しかも、ビームは弾き返せても、実体弾は弾き返すことはできないだろうという計算があったものと思われます。
しかし、イースター島の地上には多大な損害を与えたものの、海底神殿に居る白鯨を隕石雨で倒すことは不可能でした。対策としてコンドラが考えたのは、ラ・メールの出撃でした。
「白鯨を、ラ・ムーをその手で倒すのだ。勝利の暁には、プラトスの妻となることを許す……」
お世辞にも大部隊とは言い難い戦力でラ・メールを出撃させたコンドラをプラトスは非難しますが、コンドラは非情に言い放ちます。
「我らは愛のために戦うのではない。我が祖国、我らが帝王ザルゴンのために戦うのだ」

その頃、マドーラはラ・メールの来襲を感じ取ります。
あくまでラ・メールを救い出そうとする剣に、譲たちは戦うこともやむなしという意見に傾いてゆきます。
譲「果たしてラ・メールは、我々に助けられたいと思っているのか!? 余計なおせっかいじゃないのか?」
麗「マドーラ、ラ・メールはあなたやお父さんの顔さえ覚えていないのよ?」
学「ラ・メールは今までずっとアトランティス人として生きてきたんです。今さら親や姉妹だって言っても……」
譲「知らない方が幸せだって事もある……まして、あいつは敵だ……!」
麗「マドーラだって、知らなければこんなに悩むことなかったのよ」
譲たちの意見はごく常識的なものです。しかしそれは、世界中で現実に起きている民族紛争や、あるいは同じ国民同士が戦い合う現実を、「敵同士だから仕方がない」と諦観するのと同じ考え方でもあります。
だから剣は、それでも助けたい……と訴えるのです。そんな訴えの中から、わずかな可能性が導き出されます。
信「もしかすると……地球を救えるかも知れない……ラ・メールを説得できれば……」
学「そうか、アトランティス人として育ったラ・メールさえ説得できれば、アトランティス人の中に平和を望む人たちの輪が広がって……」
信「戦いは終わる……無駄かも知れないけど……」
圧倒的なオリハルコンの力にラ・グリルの力で対抗するためには、相手をさらに上回る力で圧倒するのではなく、人々の心に訴えかけるこの方法であるべきでしょう。
ラ・メールの心を動かすべく出撃する剣たち。しかし当然ながら、そうやすやすとは説得は叶いません。
見かねて出撃する白鯨。それを狙っていたコンドラは隕石雨攻撃でラ・メールもろとも白鯨を葬り去ろうとします。
ラ・メール機は損傷を受けて海に落下。白鯨もバリアを張って耐えますが、ついに持ち堪えられず隕石雨に晒されます。
ところがその戦場に、プラトス機が飛び込んできます。母の愛か、それとも帝王の後継者を守る使命感からか、コンドラはやむなく隕石雨攻撃を中止します。

一方、マドーラは海没したラ・メールを救助していました。
そこへ飛び込んできたプラトス機。意識を取り戻したラ・メールはマドーラの手を振り解いてプラトスの元へ向かいます。
マドーラを回収する剣と、ラ・メールを救出するプラトス。未来あるカップルと、行く手に破滅が待っているカップルがシンメトリックに描かれる演出が絶妙です。
ラ・メールを捨て石にして白鯨を葬ろうとした母・コンドラ、そしてその企みからラ・メールを取り戻したプラトス。
「分からない……母上の心が……いや、信じられん……!」
それは、プラトスが信じていたアトランティスの正義に初めて疑念を抱いた瞬間でした。

その頃、アトランティスではオリハルコンの力でザルゴンが復活を遂げていました。
それは全世界にとって、そしてプラトスとラ・メールの未来にとって、暗雲のように広がってゆくのでした。

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