仮説75:各話分析(15)
『さらば!5人の戦士たち』について

前回、多大な犠牲を払ってオリハルコンを取り戻したアトランティス帝国。もはや勝利を確信して喜びに沸く帝国をよそに、プラトスは一個部隊を率いて地球へ向かいます。その目的は、兄・ゴルゴスの仇討ちでした。
7話では「戦いに犠牲はつきもの」などと語っていたプラトスでしたが、当然ながら肉親の死を前にしてはそう簡単に割り切れるものではなかったようで……。
ここで不思議なのは、コンドラすらゴルゴスの死を悲しんでいるように見えない点です。
他の帝国幹部達はともかく、我が子を亡くしたとなれば精神的に動揺して然るべきです。
帝国の事が第一義となっていて、肉親の死さえ気にも留めない非情な性格だったと考えることもできますが、それにしては18話や22話でプラトスに危機が及んだ際には母親らしい気遣いも見せています。
うがった見方をすれば、コンドラはゴルゴスとは血の繋がりがない後妻だったのでは、とも思えます。もっとも、あくまで推量で、確かめる術はありません。

さて、イースター島ではどういう経緯を経たのか定かではありませんが、剣たち7人は無事に海底神殿へ辿り着いていたものの、白鯨は消息不明の状態でした。
マドーラもラ・ムーのテレパシーを捉えることができないまま、現れたミューは剣たち5人を元の生活へ戻るようにとのラ・ムーの言葉を告げます。
元々、ラ・ムーにより呼び集められた彼らです。目的と心の拠り所を失い、いさかいを起こす剣と譲。
やがて譲と麗が、続いて信と学が、最後に剣までもが、島を離れてゆきます。
後に残されたマドーラとミュー。去ってゆく剣のムーバルを断崖の上から見送るマドーラ。
身を投げようとしていると勘違いして必死に止めるミューに、マドーラが告げる言葉が涙を誘います。
「ミュー、知ってるでしょ。私、自分で命を縮めることできないの。だって……人間じゃないもの……!」
12話で剣と想いが通じ合った直後だけに、彼女の哀しみは悲痛さを増します。

一方、プラトスは今までの戦いから航行データを総合し、出撃地点をイースター島と割り出します。
この程度のことをこれまで誰も考えなかったのかといささか不思議な気もしますが、オリハルコンを失い備蓄エネルギーだけで部隊を動かさざるを得なかったであろうアトランティスの内部事情を考えれば、オリハルコン探索以外に割ける兵力がなかったのかも知れません。
しかし、このときムー側は白鯨という精神的支柱を失ない、しかも戦力を分散して非常な危機的状況に陥っていました。
アトランティスとしては、ここで残敵を掃討して後顧の憂いを絶つべきでした。
だが、プラトスが引き連れていたのは一個部隊のみ、しかも太平洋上を二手に分かれて航行中の敵に対してこれを各個撃破することなく、自らも部隊を分散するという愚を犯しました。結果、敵を取り逃がして後に戦力を再結集させてしまったのは致命的な失態でした。
もっとも、正々堂々と戦うことを信条とするプラトスに、戦略的行動を求めるのは酷かも知れません。
やはり、コンドラ以下のアトランティス帝国上層部の対応の拙さを批判すべきでしょう。

それはともかく、イースター島へ直行したプラトスはマドーラと初めて対面します。
設定ではマドーラはラ・メールと双子の姉妹でそっくりということになっているのですが、全く気付かないプラトスの鈍感ぶりが泣けてきます。
まぁ、このときは目的とするゴルゴスの仇討ちに気が立っていてそれどころではなかったということにしておきましょう。
さて、プラトスにマドーラをどうこうするつもりはなかったでしょうが、そこへ行くあてのなかった剣が舞い戻ってきます。
本来の目的である剣との一騎打ちに臨むプラトス。当初は互角だったものの、剣は次第に劣勢に追い込まれます。
そこへ戻ってきた譲と麗が援護に入り、プラトスを援護しようとした部下を更に加わった信と学が撃破。形勢が逆転したプラトスはやむなく退却します。

再び集結した戦士たち。最後まで共に進むという彼らの決意の固さに、ラ・ムーはついに姿を現して真意を語ります。
戦士たちを元の生活に戻し、マドーラと二人だけで死をかけてアトランティスに挑むつもりだったラ・ムー。
3万年前、自らの超能力でアトランティスを異次元へ飛ばしたラ・ムー。それはオリハルコンという圧倒的な力の差をリセットする最終手段でした。
しかし、その代償として老人と化した今のラ・ムーに、再び同じことをする力は残っていません。
万策尽き果てたときに人間が考えるのは、命を捨てて立ち向かうということです。そこにはラ・ムーが初めて見せる、人間としての弱さがありました。
それを救ったのは、いみじくもラ・ムー自身が剣たちに語った言葉でした。
剣「愛の力、それは生きる力だって言ったのは誰だよ!?」
譲「俺たちの心の中にある生きる力が、白鯨の力だったんだろ!?」
絶望的な状況から新たな戦いへと踏み出す第一歩となる回でした。
サブタイトルの仮題は『友よ、さらば!』でしたが、いずれにしてもストーリー前半を意識したサブタイトルで、ヒーロー物の常として、危機的状態から復活する後半を隠したものとなっていました。

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