仮説74:各話分析(14)
『南極の古代都市』について

第14話は「ムーの白鯨」中盤のクライマックス、南極決戦の本編となります。
元々、「ムーの白鯨」は人間ドラマが中心で、戦闘シーンにはそれほど重点が置かれていませんが、この回はほぼ全編戦闘シーンの連続となっており、決戦と呼ぶにふさわしいストーリー構成です。
前回のラストシーンでコンドル要塞と対峙した白鯨がオリハルコンの青い光を前にゆっくりと後退している姿が描かれていたものの、あまり明確な描写ではありませんでした。
が、この14話では冒頭より海の底深くに潜ったまま剣たちのコントロールを受け付けず進もうとしない白鯨の姿が描かれます。
ラ・ムーいわく、「オリハルコンの持つ力に動物は本能的な恐れを抱く。白鯨とて例外ではない」。
それに対して、剣はムーバルでの攻撃に出ます。他のメンバーが無茶だと反対するも、他に手だてがない以上、5人全員で巨大なコンドル要塞に挑むことになります。
しかし、このような事態に陥ったそもそもの要因として、剣たちに戦略が欠如していたことは指摘せざるを得ません。
元々、アトランティスがオリハルコンを探している事実に対して自分たちが先にオリハルコンを見つけ出そうと提案したのはリーダーである剣でした。
では先に見つけたとして、そのオリハルコンをどうするか? 剣たちに具体策は何もありませんでした。
もっとも、オリハルコンがどんなものなのか、その基本的知識が決定的に欠けていたのが一番の原因です。
持ち帰って海底神殿の奥深くに封印しておくというようなことができないと分かっていれば、わざわざ寝た子を起こす必要はありませんでした。
大体の位置を掴んでおいて、そこに敵を接近させないようにさえすれば、後はアトランティスが自滅するのを待つだけで済んだのです。
しかし、オリハルコンを目覚めさせてしまった以上、そんなことを言っても始まりません。
白鯨が動かない状況下、巨大なコンドル要塞にムーバルで立ち向かう方法は、いささかベタではありますが、要塞の戦闘機発進口から侵入して内部から攻撃することでした。
咄嗟にそんな攻撃を立案・実行してしまう剣の判断力・決断力・リーダーシップは大したものです。
しかし、発進口から戦闘機の格納庫まではいいとして、その更に奥までムーバルで通過できてしまう広々とした通路が張り巡らされているというのは、ちょっと違和感を覚えました。
普通に考えれば、人間が行き交えるサイズの通路があればこと足りるはずです。
しかし、一つの山ほどのサイズを持つコンドル要塞です。兵員を効率良く移動させるために、輸送機を要塞内で運行させる通路が設置されていたのかも知れません。
ともあれ、第一補助エンジン、第一格納庫を破壊し、オリハルコンの回収作業が行なわれている第三ブリッジでの攻防と善戦したものの、最終的に剣たちは退却するしかありませんでした。

やむなく白鯨に戻った剣たち。
「平和を願う我々の意思が本物なら、天地創造の神は見捨てないであろう」というかなりご都合主義の展開で白鯨が動き出し、コンドル要塞に立ち向かいます。
なぜかビーム砲を用いず、バリアに身を包んでの体当たり攻撃ですが、その内のワンシーン、攻撃を続けるビーム砲座が白鯨のバリアに押されてひしゃげ、吹っ飛ぶところ、別に何てことないシーンですが、私は無性に好きだったりします(笑)。
先にムーバルが中で大暴れしたことも影響したのか、あちこちから炎を噴き出して断末魔に追い込まれたように見えたコンドル要塞。
しかし、本体を上下に切り離すという隠し球を使い、下側部分を使った司令官のゴルゴス自らの命を賭けた体当たり攻撃により、南極決戦はアトランティス側に軍配が上がりました。
オリハルコンを何としても手に入れんとするアトランティスと、渡すまいとするムー、両者の死力を尽くした戦いを制したのは文字通り生命を賭けたアトランティス側となり、まさしく中盤のクライマックスにふさわしい戦いでした。

ところでこの14話の仮題は『白鯨対コンドル要塞』。しかし両者が直接対決したのは終盤近くになってからですので、サブタイトルとしてはどうかと思います。
とはいえ、正規のサブタイトルである『南極の古代都市』にしても、戦闘の背景でしかありません。例えば『死闘!南極大陸』とか、いくらでも思いつくと思うのですが、どうしてこのサブタイトルに決まったのか、謎です。

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