仮説68:各話分析(08)
『マドーラの秘密』について

いよいよマドーラファンにとって最も重要な回、第8話、『マドーラの秘密』です。
冒頭はイースター島近くにあると思われる(?)無人島でのひとときです。
前回の7話で敵を撃退し、束の間の平和を思い思いに楽しむ剣たち。
他のキャラは置いといて……我らがマドーラは剣と初デート(羨)です。
海水浴がてら魚や貝を獲る二人。水着が手に入らないのでしょう、剣はマントを流用したと思われる腰巻姿ですが、それは正直どーでも良いとして、問題はマドーラが普段着のまま泳いでいる点です。
南太平洋に位置するトンガの女性は宗教上の理由で肌を他人に晒すのを嫌い、海に入るときも普段着のままだと聞いたことがあります。それ以外の国でも女性が肌を他人に晒さない文化というのはありますので、ムーにも同様の文化が存在しているという裏設定が、もしかしたらあったのかも知れません。
しかし……例えそうだとしても、やはりマドーラの水着姿を披露するくらいの演出はあってもよかったと思うのですが……(悔)!

のっけから脱線してしまいましたが(汗)、この回で最も重要なのが海岸でマドーラと話すときに剣が発した、ムー白全話を通しても最大の失言、「あんたの体って一体……」です。
6話で剣が何気なく口にした『普通の人間』発言のときは、まだマドーラは心を完全に取り戻してはいなかったためか、心を揺らされる程度で済んだようでした。
しかし、この8話ではマドーラはもはや完全に恋する乙女状態。典型的鈍感主人公を地でいく剣が「今日はいつもと違うな」「すごく楽しそうじゃないか」と指摘するほど輝いています。
そこへ今度は『相手が普通の女の子だったら』発言。
「マドーラは3万年を生きてきた女の子。俺たち、並みの人間とはできが違うよな」
「言ってみりゃあさ、ラ・ムーと同じ神様だもんな」
「第一よ、あんなに長く海に潜っていられるだけでも驚きだよ」
「一度聞こうと思ってたんだよ。あんたの体って一体……」
既に人間でなくなっているマドーラは厳然たる事実を突きつけられ、幸福の絶頂から一転して奈落の底へと突き落されてしまいました。
意図してのことではなかったとは言え、剣がマドーラファンを完璧に敵に回す決定的な一言でした。
もっとも、それはこの8話を最後まで観た上での後付けの感想に過ぎません。
ここまで、マドーラがサイボーグであるという事実は明らかにされておらず、何の予備知識もなしに観れば、このシーンでなぜマドーラが傷ついたのか視聴者には分からないはずなのです。
だからと言って、剣を許せないと思う感情は如何ともし難いわけですが(怒)。

さて、一方のアトランティス側は前回の白鯨のパワーアップを知り、それに対抗する意味でも何としてもオリハルコンを探し出す必要に迫られます。
その手掛かりとしてコンドラが指示したのは「オリハルコンがある所、必ずその力を持って文明が生まれる」ということでした。
アトランティスが異次元に消え去った後、必ず誰かがオリハルコンの力を使って文明を築いたはず……その文明の名残である古代遺跡にオリハルコンが埋もれているのでは、というのがその論拠でした。
ともあれこの回以降、ムーとアトランティスの対決は主に古代遺跡を舞台にしたオリハルコン争奪戦となる、その道筋がここでできたと言えます。

そんなアトランティス側の動きをキャッチした麗に導かれ、剣たちは出撃します。
第一探査目標をペルーの空中都市・マチュピチュに定めたプラトス。対して剣たちは敵に気付かれないようにムーバルで忍び寄ります。
オリハルコン探査のため落石が続く中、接近に困難を感じているところへ、崖の中腹が崩れて謎の地下道が姿を現します。
「うまく行けば、奴らに奇襲を掛けられる」と中に入ってみた剣たちでしたが、結果から言えばこれは剣の判断ミスでした。
……いや、判断ミスというよりも、不運と言うべきでしょう。オリハルコン探査を切り上げて帰還しようとするプラトスが、不要になった探索ミサイルを爆破したことにより、爆風と共に地下道から敵の目前に飛び出してしまった剣たち。
体勢を立て直す間もなくビームの直撃を受け、墜落した剣はマチュピチュ遺跡の壁面に激突して崩れた石の下へ閉じ込められてしまいます。
一方、予知能力で剣の危機を感じ取ったマドーラは一人で白鯨を操縦して救助に向かいます。
マチュピチュ上空に到達して剣の陥った状況を知ると、マドーラは譲たちに白鯨を任せ、普段の彼女からは考えられない大胆な行動に出ます。
上空の白鯨の口から飛び出すと、途中でアトランティス小型戦闘機と交差しつつ髪をなびかせながら地上へ急降下、きれいに着地を決めるとビームの雨が降り注ぐ中を剣のムーバルへ駆け寄るマドーラ。その一連の流れるようなシーンは、前後のストーリー展開を考えなければ美しくさえあります。
フードの外から呼びかけるも気を失ったままの剣。その傍にはしきりにビームの至近弾が炸裂します。
マドーラはムーバルのコクピット部分からポン、ポンと岩を伝って後ろに回ると、岩に押しつぶされそうになっているムーバルを力を込めて押し始めます。
彼女の細腕で動くわけがなさそうなムーバルが、上に載った岩を振り落しつつ、大きく押し出されてゆきます。
そんな彼女の脳裏によぎる3万年前のあの日の記憶……ムー戦士たちを3万年後の未来へ送り出し、最愛の恋人・ケインを失った後、いずれは蘇るアトランティスと戦うためサイボーグとなることを受け入れた日……サイボーグとなったら二度と人間には戻れない……。
「怖くはありません。私は生まれ変わるんです……」
父、ラ・ムーを安心させるため、自分自身に言い聞かせるように告げたマドーラ。
あのとき、もう覚悟は決めたはずなのに……再び心を取り戻してしまったために、剣を愛してしまったがために、苦悩に苛まれる美少女……「ムーの白鯨」で最も泣けるシーンです。
戦いが終わった後、一人剣への想いを呟くマドーラ。それはその胸に仕舞ったまま、決して剣には届けられない言葉でした。

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