仮説67:各話分析(07)
『変身!!白鯨』について

「ムーの白鯨」第7話はスーパーロボット物の黄金パターン、ヒーローが敗北の後、パワーアップして復活するお話、その後半になります。
前回、コンドル要塞の主砲を受けて海に沈んだ白鯨。剣たちがその安否を気遣い消息を探している頃、アトランティス側では前回の戦闘で剣との一騎打ちに水を差されたプラトスがゴルゴスと衝突していました。
しかし、プラトスは新たな任務を与えられ、部隊を率いて出撃します。
その際、プラトスに同行を願ったラ・メールに対し、いささか皮肉めいた笑いを見せたゴルゴスの反応が、個人的にはいささか気になりました。
ストーリーを先取りする内容になってしまいますが、このときゴルゴスはラ・メールの出自を知っていて、その伏線を張ったとも取れます。とはいえ、その辺りの真相は結局描かれることはありませんでした。
一方、マドーラはそんな敵の動きを感じ取ります。
しかし……マドーラの予知能力の源はラ・ムーにあるはずで、彼女が予知能力を発揮した時点でラ・ムーが生存していることを示していると言えるのですが……そのことは皆に知らされていなかったと考えるのが妥当でしょう。
ともかく、敵の来襲を予知してマドーラと麗が弱気になる中、剣はたった一人で出撃します。

さて、3万年前にアトランティス帝国が残した基地跡であるエジプト・ギザに向かったプラトス。
いち早く集結してきた国連軍戦車部隊に対し、砂の下に眠っていたスフィンクス要塞を起動させ、一瞬にして壊滅させます。
一弾も放たない内に勝負が決してしまった、戦闘とすら呼べないシーンはアトランティスと国連軍との戦力差を如実に物語るものですが、スフィンクスの咆哮一発で壊滅したように見えるその攻撃は、超音波砲の一種でしょうか?
一方、単独出撃した剣はスフィンクス要塞を発見、これに突撃して攻撃を加えますが、あっさりと捕らえられてしまいます。この辺り、剣の考えなしの猪突猛進ぶりが顕著なところです。
結果として、これまで3話、5話、6話と三度対決してきた剣とプラトスがついに直接対面、お互いに名乗ることになります。
ここにおいてもプラトスの口からはケインの名が出ることはなく、彼はケインを(少なくともその顔を)全く知らなかったことがはっきりします。
そしてプラトスの皇族としての選民意識ゆえか、――アトランティスの支配が地球に平和をもたらす。そのための戦いに犠牲はつきもの――という、見事なまでの上から目線の物言いが炸裂します。
ここにきて剣とプラトスの4度目の、今度は戦闘機を駆ってではなくお互い自らの剣術を駆使しての対決となります。
プラトスは部下に1対1で戦うと告げ、自分に勝てたら無事に帰してやると剣に言い放ちます。剣はムー戦士長の魂を受け継ぐだけのことはあり、初めて手にしたレーザー剣を使いこなし、何とか引き分けに持ち込むことに成功します。
とはいえ、プラトスの約束をその部下たちが守るはずもなく、絶体絶命の危機に追い込まれる剣でしたが、そこへ譲たちが駆けつけて救い出されるのはお約束の展開です。
しかし、戦闘機群ならともかくスフィンクス要塞が相手ではムーバルでは歯が立たず、逃げ回るしかありません。
そこへ生死不明となっていた白鯨が登場、再びアトランティスに挑みます。
白鯨がまだ生きていたことに驚くも、既に性能を分析して余裕のプラトス。その言葉通り、白鯨は手も足も出ません。
そのとき白鯨が表皮を破るように変身、新たに備わった冷凍ビーム――『オーロラビーム』の呼び名はこの時点では登場しません。しかも、ビームの形状も違います――の一撃でスフィンクス要塞を撃破。
まさしく黄金パターンの展開で大勝利となります。
全体としては主役側のパワーアップエピソードですが、全体のストーリー構成としては剣とプラトスのライバル対決、お互いの名を認識するという側面が重要な回です。

なお、余談ですが……白鯨の変身シーン、表皮に亀裂が入って四散する一瞬、その画面一杯にデカデカと文字が浮かび上がります。
一コマだけなのでコマ送りにしないと分かりませんが、読み取れる文字は「#7」「328」「引き透過光」といったもので、演出の指示内容が何らかの手違いで映り込んでしまったもののようです。
何とも笑える隠れエピソードです(笑)。

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