仮説65:各話分析(05)
『白鯨と5人の戦士』について

「ムーの白鯨」第5話は、アトランティス側がラ・ムーが生存しているらしいとの情報を得たところから始まります。
ゴルゴス曰く、
「白鯨と言えばムー大陸の守り神。その白鯨が我々の前に立ちはだかってきているのです。だとしたら、ラ・ムーをおいて他には……」
とのことなのですが、その前の3話、日本でプラトスが交戦した相手はムーバルだけでしたし、2話で国連軍基地を攻撃した部隊が全滅させられたときも白鯨は前面には出て来ず、ここまでの段階で白鯨がアトランティス側の前に姿を現したのは1話の先行偵察隊との戦闘のみでした。
恐らく、ムーバルと交戦したことで古代ムーの残党の存在に気付き、情報を統合した結果、消息を絶っていた先行偵察隊の記録を見つけ、そこから白鯨の存在にたどり着いたといったところでしょう。
ともかく、今回出撃するプラトスの目的は、白鯨と接触してその能力を分析するためのデータを集めることになります。

一方、イースター島ではムー白ファン、というかマドーラファンにとって重要な意味を持つ、ある事件が起きます。
マドーラの手料理に対する剣の、『食えるかい、こんなの』事件です。
前回、4話でマドーラが自分の前世の恋人であったことが判明した剣でしたので、これは好きな娘に意地悪したくなる思春期の男特有の反応とも取れますが……って小学生か、お前は!
後に剣はマドーラファンを完璧に敵に回す決定的な言動をするわけですが、その片鱗がこのエピソードで見て取れます。
思うに剣は1話で海に落ちて溺れたところをマドーラに助けられているわけですが、剣の性格からすると女に助けられるのは恥と考えそうで、彼がやたらと反発したのもその辺りに原因があったのでは……というのは深読みが過ぎるかも知れませんが……。
しかし、マドーラがラ・ムーの娘で、しかも自分の前世の恋人だったという事実を知ったとあっては、意識するなというのが無理な話でしょう。
自分がここにいるのが偶然ではなく、3万年前から決められていた必然であったと知ったことで、剣の中でラ・ムー、そしてその娘であるマドーラに対してどこか距離を感じさせられたことが、反発を強めるきっかけになったように思われます。
同話で剣が麗に語った言葉に、それは集約されています。
「あの人は今も昔も人間じゃない、神だ」
「ラ・ムーは、3万年も未来の人間の運命を、左右できる力を備えてるんだからな」
「あの人は、俺がオギャアと生まれたときから、ずっとどこかで俺を見ていたんだ……出来心で自転車を盗んだときも、畑のスイカをかっぱらったときも……どっかでな!」

そんな葛藤とは関係なく、彼らに新しい使命が与えられます。それは白鯨を操縦してアトランティスと戦うこと……。
スーパーロボット物で言えば第1話に当たる、世界の救世主的存在に主人公が乗り込み、敵を粉砕する、その定型パターンが5話にしてようやく登場となります。
この場合、何らかの不都合や不具合があって主人公側もスムーズには敵に勝利できないのが常道です。
本作の場合、まずミューから最初にリーダーを決めなければならないという話があったものの、そこへ敵の来襲があってリーダーの決まっていない状態では白鯨で戦えないとの判断となります。
だったら、とっととリーダーを決めりゃいいじゃないかとは誰も思わないらしく、ムーバルを駆っての応戦となりますが、数の劣勢により麗が負傷、一か八か、ぶっつけ本番で白鯨に乗り込んでの初戦に突入してしまうのもお約束的です。
また、白鯨での戦闘を決意したときに必要とした『白鯨の呼び方』なんてものが出てくる辺りも、操縦カプセルにいたマドーラが操縦して行けばいいじゃないか、という突っ込みなんか、やはり入れてはいけないんでしょう。
呼んだら即、戦闘空域真下の海面を割って白鯨が現れたことから、どう考えてもわざわざ呼ぶ必要なんかなかったんですが(笑)。
更に、麗の負傷で白鯨は思うようにパワーを上げられない状態となり、ムー戦士長の精神を受け継ぐ剣がリーダーシップを発揮して皆をまとめ、勝利を得る流れもある意味、パターン通りの戦闘と言えます。
もっとも、麗に無理をさせられない状況を考慮すれば、海に潜って逃げてしまうという選択肢もあったわけですが、それをしなかったのは両親を殺された剣にとって仇であるアトランティスを叩くことが最優先になっていたと理解することも可能です。
いずれにしろ、この5話は白鯨での戦闘パターンと白鯨内における戦士たちの指揮系統が定まった回ということが言えます。
一方、プラトスの集めたデータからラ・ムーの生存を確信したアトランティス側。決戦の予感をはらみつつ、次回に続くとなります。

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