仮説64:各話分析(04)
『3万年前の世界』について

前話のラストシーン、剣たちの前に姿を現した白鯨の口の中からミューが姿を現したところからこの4話は始まります。
とは言っても、まだミューの名前も登場せず、麗には「エンジェル」、学には「ユニコーン」と好き放題言われ、当人(?)も「ミュー、ミュー」と鳴き声のような言葉を発するだけで名乗りもせず、まるで信としか意思の疎通ができないかのような描写でした。
さて、ミューに白鯨の中へ導かれ、テレポートで転送されたカプセルで3万年の時を超え、ムー大陸を訪れた剣たち。
最初に登場したのが譲の前世であるジョナス、続いて登場した麗の前世・レイナ。
ここまで、剣たちはカプセルの中から3万年前の映像を観ているような描写でした。
その後、信の前世・シンムが登場するところから、5人は登場人物と同一化したような描写となります。もっとも、あくまで演出上のことで、実際には剣たち自身はカプセルから情景を観ている状態に変わりなかったのかも知れませんが。
ともかく、シンムのシーンからミューがその名前も含めて登場、いささか舌足らずの印象ながらも普通に会話できることも判明します。
冒頭のミューの描写は何だったんだと思いつつ、続いて学の前世・ガラクシャが登場、中央行政府に集合したところで剣の前世・ケインがマドーラと共に登場して全キャラが揃います。

この回でようやく、なぜ剣たちが戦士として選ばれたのか、1話から引っ張ってきた謎が明らかにされます。
ラ・ムーが命を賭けた戦いに臨み、アトランティスを異次元の彼方へ追いやる決意をしたこと……しかし3万年後にアトランティスが復活して地球に新たな脅威が訪れることから、そのときムーの戦士の精神を備えた未来の戦士を必要としたこと……そのために3万年前から転生してきたムー戦士が譲たち4人であること……未来への転生を拒否し、最後までアトランティスと戦うことを選んだムー戦士長、その魂を3万年の時を超えて受け継いだのが剣であったこと……。
ここで気になるのが、なぜラ・ムーはアトランティスとの決着を3万年もの未来に先送りしたのかということです。
3万年という長年月となったのはたまたまとしても、先送りされた先の未来の住人にとっては迷惑なことこの上ありません。
ラ・ムーの言葉から想像するしかありませんが、恐らくそれは決戦に先立って、アトランティスから力の源であるオリハルコンを奪うことが先決だったのでしょう。
ラ・ムーによると「白鯨をもってすればあるいは、アトランティスの力を凌駕できるやも知れん」とのことでした。その一方、「白鯨が破壊の神と化したとき、この世は滅ぶ」とも言っています。
つまり、アトランティスがオリハルコンを保持した状態のまま、白鯨がその力を解放して対抗しようとした場合、双方の破壊力が大きくなり過ぎて、地球そのものを滅ぼしかねなかったのでしょう。
しかし、大陸ごと異次元へ送り込むことによってアトランティスがオリハルコンを失った状態となれば、こちらも白鯨の能力を制御不能になるほど引き出してしまう危険がなくなると考えることができます。

さて、この回ではマドーラが実はラ・ムーの娘であること、また剣にとっては自分の前世の恋人であったことも明らかになります。
現代に転生した剣たちを導くため、恋人を失ったまま孤独の3万年を生きたマドーラ。ラストはこの回、終始剣たちと別行動だったマドーラが、一人イースター島の海岸で夕日を見つめて佇むシーンです。
この時点では彼女が心を喪っていることはまだ明らかにされていないので、描写的には哀しい過去を胸に秘めたヒロインの姿といったところです。
後から予備知識を持って観れば、特に哀しみの表情をしているというわけではないのですが、ストーリー展開と夕日の風景という情景が重なって、実に哀しげな表情をしているように思わせてしまう……このあたりの演出は見事です。

ところで些細なことですが……現代の剣たちと3万年前のケインたちの違いは、衣服の色が現代は白いのに対して3万年前のそれは緑色であるという点ですが、スタッフのミスらしく、アップシーンはともかく遠景では時々逆になってしまっているのがいささか気になりました(汗)。

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