仮説62:各話分析(02)
『ムーの子供たち』について

「ムーの白鯨」第2話は、第1話で謎のまま引っ張っていた導入編の後半となります。
冒頭では剣たちムー側の人物は登場せず、アトランティス側の視点で物語は進行します。
アトランティス側人物の台詞で地球侵略(彼らに言わせれば奪還)を目指すアトランティスの背景が語られ、ゴルゴスは降伏勧告を行ないます。
しかし、プラトスがコンドル要塞のブリッジから地球を見たときの感動の言葉は、よく考えてみるとおかしな表現です。
それというのも、彼は地球を生まれて初めて見たかのように語っているためで、小説版ならプラトスはアトランティスの異次元突入時はまだ幼くて地球の記憶がなかったと説明できる(それはそれで別の矛盾もある)のですが、テレビ版では3万年前そのままの姿で登場しているわけで、地球の記憶がない、もしくは悠久の時を超えてようやくたどり着いたかのように語るのは矛盾しているように思えます。
もっとも、3万年前のアトランティスはムーとの全面戦争中だったわけで、プラトスが物心ついて以降に宇宙へ行ったことがなかったとしても、それほど不自然ではありません。
また、異次元空間というところは通常とは全く異なった環境にあったと思われますので、それを我々の常識で量ることなどできるはずもありません。
ラ・メールが「3万年の長い眠りの中で夢に見続けてきた……」と語っていることから、もしかすると、肉体的には時間が凍結した状態であっても、意識的・感覚的には3万年の時間経過が実感できる、というような状態だったのかも知れません。
それはともかく、ゴルゴスの降伏勧告を受けた国連会議で「アトランティスなど、ただの伝説じゃないか!」というような戸惑いから各国の利害対立で会議が紛糾したのに、わずか4時間後に「地球代表として」回答しているのはある意味、大したものです。
どうやってあの大荒れの会議を収めたものか、ちょっと興味があります。

さてその頃、剣たちと対面を果たしたラ・ムーの口から敵・アトランティスの正体とその目的、そしてムーとアトランティスの3万年に遡る因縁が語られることになります。
しかし、なぜ剣たちが戦士として選ばれたのか、その辺りの説明がなされないままなので、いささか説明不足の感はあります。
譲たち4人はムーの紋章のあざがあるので、古代ムーと何らかの関わりがありそうなことは分かりますが、剣の場合はそれがないため、ラ・ムーが選んだという言葉だけでは納得できないところでしょう。
しかし、選ばれたことに特に疑問を感じていないらしい譲たちに引きずられる形で、剣もなし崩し的に戦いに巻き込まれてしまうことになります。
スーパーロボット物なら第1話に該当する、主人公たちが主役メカに搭乗して敵を撃破するシーンですが、ここではまだ本来の主役メカ(?)である白鯨ではなく、個人メカ・ムーバルの登場です。
しかし、剣だけが他の4人に比べてムーバルの扱いが不得手のような描写がされています。
まだ3万年前の事情が明かされる前なので、視聴者には剣だけが劣等生のように思えてしまいますが、設定的にはムー戦士の精神を直接転送された4人とそうでない剣との差が表れているのでしょう。
とはいえ、マドーラに「まだ無理」と言われながらも一人突出した剣がアトランティス小型戦闘機部隊を相手に単独戦闘をこなしてしまう辺り、まだ目覚めていないとはいえやはりムー最強戦士の魂を受け継ぐ者ということでしょう。

ところで、この回ではサブタイトルともなっている「ムーの子供たち」という概念が登場します。
「現代の人類は皆、ムーの子孫」=「ムーの子供たち」という論法で、剣たち5人を指す言葉でもありますが、作中ではそれほど重要視されていないようです。ただ敵であるゴルゴスやザルゴンは後の回で「ムーのこせがれども」と呼んでいましたが……。
なお、この時点でマドーラがラ・ムーの実の娘であることはまだ明らかにされていませんが、剣たちの初陣をイースター島で見守るマドーラがモノローグで「お父様」と呼びかけているのが一種の伏線となっているようです。

その頃、地球に送り込んだ戦闘隊の反応消滅に驚愕するゴルゴスとプラトス。
情報取得方法は不明ですが、現代の地球の軍事力レベルがアトランティスに遠く及ばないことを既に掴んでいたらしいのはさすがです。
しかし、1話で白鯨に遭遇して全滅させられた先行偵察部隊の情報はまだ届いていなかったようで、いささか片手落ちといったところでしょうか。

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