仮説61:各話分析(01)
『白鯨めざめる!』について

「ムーの白鯨」という作品は、所謂スーパーロボット物のパターンを踏襲していて、それはムー戦士5人のキャラクター類型からして明らかです。
物語の導入となる第1話も然りで、スーパーロボット物であれば……
・正体不明の敵が出現、現有兵器では全く歯が立たない。
・丁度その頃、選ばれた戦士たちは某所に招集されていた。
・戦士たちは予めこの事態を予想して建造されていたスーパーロボットに乗り込んで敵を撃退する。

「ムーの白鯨」の場合、冒頭に地球を襲う危機は正体不明の敵などではなく、津波や地震などの天災というのが独特な点です。
これは本放送当時の1980年、その2年後に控えていた「惑星直列」が本作のテーマの一つであったことが大きいと思われます。
しかし、「惑星直列」というのは当時結構話題になったような記憶がありましたが、その割にこの現象をテーマに据えた作品は本作以外になかったような……。
それはともかく、戦士たちの招集にしても公的機関などが絡んだものではなく、剣の場合は災害からの救助の形を取りつつもほとんど拉致に近いものですし、他の4人は神秘的な夢に導かれる形で自発的にイースター島へ向かいます。
この時点で、彼らは未知の敵との戦いに身を投じることになるとは夢にも思っていません。

一方、彼らの知るよしもない場所で、正体不明の敵は姿を現します。
正体不明の飛行物体を捉え迎撃に飛び立った国連軍戦闘機部隊を一方的に叩きのめした謎の戦闘機群が、そのまま侵攻して大都市を焼き払うシーンは、スーパーロボット物の敵出現パターンそのままです。
ロボット兵器でないためにいささかインパクトに欠けるきらいはありますが……良く言えばリアルな描写ではあります。
ただ、国連軍戦闘機部隊との空中戦の描写はF−14の可変翼の動作や機体の旋回に従い機体に落ちた影が動いてゆく描写など細かなところまで丁寧に描き込まれていて、この辺りは第1話限定で本作のメカ修正を担当された金田伊功氏が実に良い仕事をされています。
金田伊功氏と言えば派手なメカアクションが真骨頂ですが、ここでは作品の雰囲気に合わせて現実的な描写に徹しておられるところはさすがです。

さて、剣たち5人が初顔合わせしたイースター島上空で偶然にも(?)発生する戦闘機部隊同士の空中戦。
手もなく全滅させられる国連軍を見つめる剣たちの前に、突如海面を割って現れる白鯨。
鯨が空を飛ぶという事実に驚く剣の当たり前な反応をよそに、敵戦闘機群を一蹴する白鯨。
あまり派手さのない戦闘シーンですが、国連軍機のミサイル攻撃ではかすり傷ひとつ付けられなかった敵戦闘機を展開したバリアに接触しただけで破壊する姿は独特な雰囲気があります。
通常のスーパーロボット物のパターンなら主人公たち自身が敵を倒すものですが、ここではその戦闘を見守るだけ、敵の名前はおろか、味方であるはずの白鯨やマドーラの正体すら不明のまま次回へ続くとなります。
通常のパターンなら1話で済ますはずの導入編を前後篇に分けている形ですが、作品の神秘性を掻き立てるには良い演出だったと言えます。

あとこれは余計なことかも知れませんが、撃墜されたF−14はイースター島に落下していましたが、あの後、戦闘機パイロットたちの遺体を始末したのは、やはりマドーラだったんでしょーか……(汗)?

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