仮説60:譲と麗について

白城譲と白鳥麗、「ムーの白鯨」第三のカップルです。
が、他の二組と比べるとストーリー上の絡みも今一つで、どうしても地味な印象は拭えません。

3万年の時を超えた恋人同士の再会ということであれば剣とマドーラもそうでしたが、譲と麗の場合は劇的要素に欠けます。
その理由を考えると、やはり譲と麗は二人とも精神を直接未来へ転送されたことが大きいのだと思われます。
同じ魂を持っていても、3万年の長きに亘って輪廻の中を旅した後に再会した剣の場合は、運命の相手に巡り会っても真に心を通わせるのに時間が掛ることになりました。
それゆえに、物語の根幹をなすストーリーが展開されることになったわけですが……。
一方、輪廻の中を巡ることなくお互いに3万年前そのままの魂を持って再会した譲と麗は、再会した瞬間から自然に心を通わせることができたのでしょう。それこそ、昨日までと同じ日常を過ごしているかのように……。
その分、再会するまでの間、譲と麗はまだ見ぬ相手の存在を想って、どこか満たされない日々を送っていたのではないかと思われますが、作中で描かれることがなかったので想像の域を出るものではありません。

実際、二人には恋愛関係を感じさせるようなエピソードがほとんど見られませんでした。
二人の関係がクローズアップされたエピソードと言えば、下記のようなものがあります。
(1)5話、アトランティス戦闘機群との戦闘で負傷した麗を譲が気遣う場面。
(2)10話、ワールドカップ開催のニュースに心を動かされた譲を麗が気遣う場面。
(3)15話、ラ・ムーの敗北宣言を受けてイースター島を去ろうとする譲に麗が付いて行ったシーン。
(4)25話、敵の襲撃で負傷した譲を麗が看病するシーン。
(5)25話、白鯨と共にグレートパレスへ突入する寸前、麗が譲に「好きだった」と発言したシーン。
他にも寄り添っている場面は何度も見受けられ、一緒にいるのが当たり前、既に何年も連れ添った夫婦、とまでは言わないまでも、昨日今日始まった関係ではなかったから、共に居るのが自然な二人だったと言うことができると思います。
激しく燃え上がるような恋ではなく、炭火のような温かな愛情とでも言いましょうか。
そしてそんな二人が居たから、剣とマドーラという初々しいカップルの存在が引き立ったとも言えます。
恋愛物で言えば、苦難に晒されるメインカップルに対して、適切なアドバイスを送る先輩カップルと言ったところでしょう。
また、3万年を超えた恋人同士ということとは別に、譲はサッカー、麗はテニスと、それぞれがスポーツに打ち込み、しかも非凡な才能を発揮した二人だけにどこか共通したものを感じていたのかも知れません。

いずれにしても、他の二組が波乱の物語を紡いだのに対し、ドラマ性はないものの安心して見ていられる二人ではありました。

戻る

inserted by FC2 system