仮説57:ポポロについて

「ムーの白鯨」第10話に登場したゲストキャラ、ポポロ。
1話限りの登場にも関わらず、譲のライバルとしてのストーリーへの絡みもあって、なかなか存在感のあるキャラでした。

ポポロはサッカーの天才、フライング・ジョウこと譲をして、
「シュートをブロックされたのは生まれて初めて」
とまで言わしめた、ペルーチームの守護神です。
一方のポポロも譲に対して、
「あんたのシュート、凄いぜ」
と、実力を認めています。
ポポロの年齢は明らかにされませんでしたが、ワールドカップの前年に行われたジュニアカップで対戦していたことから、二人は同年代と推察されます。
しかも、時間切れ引き分けに終わったジュニアカップの決着を来年のワールドカップでつけようと誓い合っていることから、この時点でポポロもワールドカップへの出場が決まっていたようです。
ま、ポポロも譲がライバルと認めたほどの天才児ですから、特に無理のある設定ではありません。
そもそも、ペルーはお世辞にもサッカーの強豪国というわけではないので、それがワールドカップへの出場を決めたのは、やはりポポロの守りの力が大きかったのでしょう。
もっとも、作中でペルーチームのユニフォームは南米のもう一つの強豪であるアルゼンチンのものを模していたようで、ここではブラジルのライバル国という設定だったのでしょうが……。

さて、攻撃の譲に対して守りのポポロ、不世出のサッカーの天才児二人がワールドカップの大舞台で逢いまみえれば、後世に語り継がれる名勝負が繰り広げられたことでしょう。
しかし、それはついに実現しませんでした。
ポポロは、アトランティス帝国がナスカに築いた基地を護るために残した奴隷たちの子孫、「空の民」の一員で、帝国の招集に応じてナスカに戻らなければなりませんでした。
彼ら「空の民」がナスカを護る動機付けになっていたのが、その先祖にアトランティス人が施した「警備伝承催眠」というものでした。これはいかなるものだったのでしょうか?
あくまで私見ですが、これは民族の深層心理に刻まれた掟のようなものだったのではないのか、という気がします。
掟などと言うと仰々しく感じますが、それほど大層なことではありません。
例えば、日本人なら正月には厳粛な気持ちになり、お盆やお彼岸になると先祖の霊に手を合わせるのは、ごく自然なことでしょう。
そんなごく当たり前のように、先祖から子孫まで受け継がれている習慣というのは、世界中どの民族にもあるものです。
アトランティスは彼ら「空の民」の先祖に、そういったものを刻みつけたのでしょう。
そういう呪縛は大変強固なもので、そこから逃れることは容易なことではありません。
呪縛などと言うとネガティブな印象ですが、何かしら行動規範となるものは人間誰しも持っているものです。
それは従うのが当たり前、当人自身が呪縛とすら感じていないはずです。
剣の「アトランティスは地球の敵」という言葉に心を動かされた様子はありましたが、具体的に何か行動を起こすことなくアトランティスに従い、無二の親友である譲の説得にも耳を貸すことなく、自らの王への忠誠を貫き、ただのコントロールタワーを村の守り神として崇め、支えるために死んでいく。
それはポポロの「空の民」としての生き方だったと言えるのではないでしょうか。

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