仮説56:グラーティスについて

アトランティス帝国の長老科学者、グラーティス。アトランティス帝国のみならず、「ムーの白鯨」全話を通しても、最長老のキャラです(ラ・ムーも姿は老人ですが、アトランティスを異次元に飛ばした反作用で老人化してしまっただけで、実際は壮年の設定です)。
側頭部から後頭部にかけて残った頭髪は白髪で、同じく白一色の頬髭と顎鬚をたくわえ、いかにも「長老」といった風貌です。
ハイドは前線部隊の参謀長的な立場と考えられますが、対するグラーティスはさしずめアトランティス本国における科学者グループの中心人物といったところでしょうか。
しかし、それ以外にグラーティスに関して推察できる事象はありません。
もしかすると、グラーティスはハイドの恩師に当たる人物だったのでは、くらいの想像はできそうですが……。
アトランティス帝国の社会がどのようなものだったのかは想像するしかありませんが、かなりの階級社会のようでしたから、ともに帝国科学界の上流階級に地位を占めている二人が同じ学閥に属していたというのは、ごく自然なことでしょう。

そもそも、グラーティスが作中に登場したこと自体、背景キャラとしてを除くと二度しかありません。
最初は12話、アトランティス本国に呼び戻されたゴルゴスに対して、アトランティス大陸の木星との激突の危機を告げるシーン。
そして二度目は21話、ラ・メールを囮にオリハルコンパワー攻撃で白鯨を葬る作戦の指揮を執ったシーンです。
いずれのシーンでも、帝国の運命を左右するような重要な局面について語っているとは思えないほど、淡々とした印象を受けます。
既に老年となって達観していると見るべきなのか、それとも情に流されず純粋に理論のみで物事を語る人物だと考えるべきなのでしょうか。
それほど悪役然としたキャラでないので、もしかすると意に反してザルゴンに仕えていただけで、本当はアトランティスの未来を憂うる良識派の人物だったのでは……というのは勝手な想像です。

さて、グラーティスは意外なことに、アトランティス側登場人物の中でその最期がはっきりと描かれていない数少ないキャラでもあります。
25話の最後において、オリハルコンパワーの暴走で大陸が海没してゆくような描写があるので、生存している可能性はあまり高くなさそうですが、さりとて可能性ゼロとも言い切れません。
もしかすると最終話以降、大災害を生き延びたアトランティスの民を導いて帝国の復興に尽力する、というような未来図もあり得たかも知れません。
聡明な人物であれば、ザルゴンの統治が遠からず破綻すると予想することは、そう難しいことではありません。
そんな未来を予期して、破局の中から復興を目指す種を予め播いていた人物が、もしかしたらアトランティス帝国の中にも居たかも知れません。
悪の権化のような描かれ方をしたアトランティス帝国でしたが、そんな中にも理性が残っていたとしても不思議はありません。
グラーティス本人か、又はその教えを受けた中にそういう人物がいたのではと想像しているのですが、果たして……?

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