仮説54:コンドラについて

アトランティス帝国女帝・コンドラ。「ムーの白鯨」前半において、永眠中の帝王・ザルゴンに代わって帝国を率いた女傑です。
彼女の行動原理は帝王ザルゴンの復活、そしてアトランティス帝国の再興につきると言えます。
3万年前に世界制覇を目前にして、ラ・ムーにより力の源・オリハルコンを奪われ、異次元空間へ追いやられた苦難の歴史。その屈辱を払いのけるには、再び地上に覇をとなえること以外にはなく、そのためにはオリハルコンを取り戻し、帝王ザルゴンを復活させることが必須条件でした。
惑星直列の影響により大陸が通常空間に復帰すると、コンドラは二人の皇子に部隊を預けて地球に派遣します。
配下の将軍でなく、皇位継承権を持つ皇子を二人とも送り出す点を考えても、コンドラのオリハルコン奪還にかける決意のほどが分かるというものです。

立ちはだかる白鯨ラ・ムーの妨害に苦戦しつつも、14話で悲願であったオリハルコン奪還をなしとげ、圧倒的優位に立ったアトランティス帝国。
帝王ザルゴンの復活も時間の問題となり、二人の皇子の内、ゴルゴスを喪うという痛手を負ったものの、もう一人の後継者であるプラトスは健在であり、コンドラにとっては順風満帆の思いだったはずです。
そんな中で唯一の気掛かりは、未だ健在な白鯨ラ・ムーとムーの生き残りたちだったでしょう。
幾度となく討伐隊を差し向けるもことごとく返り討ちに逢い、オリハルコンの強大な力を手にしていることもあって、コンドラの行動は次第に常軌を逸してゆきます。
オリハルコンパワービームでラ・ムーをイースター島ごとこの世から消滅させようとしたり、隕石の雨をイースター島に降り注がせたり……。
もっとも、それまででもコンドラはアトランティス主戦派の筆頭でしたので、今さらという感じではあります。
しかし、18話でラ・メールを囮に白鯨を葬ろうと罠をかけたものの、ラ・メールを救おうと隕石の雨の中に飛び込んだプラトスの姿に思わず攻撃中止を命令してしまうあたり、コンドラにも母親としての情が残っていたと言えます。
その後、復活したザルゴンの暴走に公然と反対するプラトスを諌めるコンドラには、帝王に付き従う妃としての立場と同時に、我が子を護ろうとする母親としての想いがあったはずです。
皇子といえども、帝王に逆らうことはその立場を危うくすることは明らかであり、プラトスを最悪の立場に追い込まないための親心だったと考えるべきです。

しかし、ラ・ムーに対する切り札としてのみラ・メールを手元に置いていたというコンドラでしたが、22話でプラトスのラ・メールへの想いを告げられ、彼女はどのような想いを抱いたのでしょうか?
ザルゴンと違ってプラトスに対する母親としての愛情は持っていたようでしたし、18話ではラ・メールのプラトスに対する想いを知った上でそれを餌に囮として送り出したわけですから、男女の愛も理解していたはずです。
しかし、プラトスにとって次期帝王の座よりもラ・メールの方が大切だということが、コンドラにはこの瞬間まで理解できていなかったようです。
そしてコンドラが我が子と同じくらい人生を賭けてきたものが、アトランティス帝国でした。
3万年前、帝国が長い異次元の眠りについた後も、自らの肉体をサイボーグ化して生き続け、帝国の復活に備えてきたことをプラトスに明かすコンドラ。
そしてコンドラはオリハルコンパワーを浴びて巨大化し、自ら白鯨との戦いに臨みます。
「アトランティス帝国のために死ねるなら本望」とまで言い切ったところから考えると、勝っても負けてもオリハルコンパワーを自ら浴びた時点で、もはや命はないことを覚悟していたと思えます。

ところで、帝国全体が眠りについたのに、なぜコンドラ一人だけがサイボーグ化する必要があったのでしょうか?
ラ・ムーはアトランティス帝国が3万年前そのままの姿で蘇ったと言っていましたので、普通に考えれば肉体をサイボーグ化して延命する必要はなさそうに思えます。
作中ではあまり細かな説明がなされていなかったのであくまで想像ですが、帝国が通常空間に復帰したとき、どのような場所に出現するか全く予想がつかないことに対処するためではないでしょうか?
彼らが『長い異次元の眠り』と表現したように、異次元空間に居る間の時間経過はなかったのでしょう。
しかし、実際にアトランティス大陸が復帰したのは土星付近の宇宙空間でした。
このとき、通常空間に戻り再び時間が流れだすと同時に、大陸の大気を保持するなどの生命維持装置を作動させなければ、一瞬にして帝国は全滅です。
そのため、時の止まった帝国の中で、何らかの方法で活動のできる人間が必要だったはずです。
大陸の中で唯一人別の時間を生き続け、しかもどれだけの時間を待つことになるか分からないとなれば、サイボーグ化によって延命処置を施さなければならなかったのも当然です。
時を止めた帝国の中で果たしてどれだけの歳月を待ち続けたのか……はるか悠久の時をたった一人で生きてきたコンドラ。
絶対の孤独の中で、自分をこんな状態に追い込んだラ・ムーへの憎しみはつのるばかりだったでしょう。
アトランティス帝国復興に賭ける想いが尋常でなかったことも頷けます。

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