仮説46:白銀剣について

白銀剣(シロガネ・ケン)、15歳。3万年前のムー戦士長・ケインの生まれ変わり。
一応、「ムーの白鯨」の主人公ですが、正直言ってあまり主人公然としたキャラクターと思えないのは、やはりマドーラを巡る僻みゆえでしょうか(汗)。

他の4人がムー戦士の精神を直接未来へ転送されたのに対して、唯一、ケインだけが人為的な精神の転送をよしとしなかったためか、特に物語当初は異端児的な存在でした。
そもそもイースター島への招集からして、他の4人が不思議な夢に導かれつつも基本的には自らの意思で集まったのに対して、剣だけは災厄からの救助とはいえ拉致に近いものでした。
ムーのシンボルマークのあざも剣だけは存在せず、彼が疎外感を感じていたことは想像に難くありません。
剣が仲間たちとの間でいさかいを起こしたりしたのも、自分が異端児であるというコンプレックスがその一因と考えるべきでしょう。
イースター島を飛び出して、故郷へ帰ろうとしたのも剣だけでした。
もっとも、自分の意思でイースター島へ来たのでない剣にしてみれば、それはごく当たり前の行動とも言えます。
その故郷がアトランティスによって壊滅させられ、初めて剣にアトランティスと戦う動機が発生するわけですが、それはあくまで肉親を殺されたことに対する復讐心であって、3万年前から続く使命感とは別のところにあったはずです。
アトランティスとの戦いの中で負傷した後、剣にも額にムーのシンボルマークが浮かび上がり、ムー戦士の一人としての証は得られますが、剣自身にとってそんなことはどうでもよかったのではないでしょうか?
続く4話で3万年前の世界を見せられ、自分の前世がアトランティスと戦うムー戦士であったことを認識しましたが、それとてどこまで自身のこととして受け取ったのか、はなはだあやしいものです。
むしろ、その事実を知ったことで、剣はラ・ムーに対する距離を感じたようにも見えます。
それが如実に表れているのが5話で剣が麗に語った台詞です。
「あの人は今も昔も人間じゃない、『神』だ」
「ラ・ムーは、3万年も未来の人間の運命を左右できる力を備えてるんだからな」
実際のところラ・ムーは神ではなく、常人にはない能力を持っているだけでれっきとした人間なのですが、自分には及びもつかない高所から見下ろされているという意識が、剣を苛立たせていたとすれば、頷ける話です。

さて、色々とトラブルメーカーなところはありましたが、3万年前にムー戦士長を務めたケインの生まれ変わりということもあってか、剣は戦士たちの中でリーダーシップを発揮する、熱血漢タイプの主人公ではありました。
ムー最強戦士の精神を受け継ぐだけに戦闘能力は突出しており、最初こそとまどいを見せていましたが、ろくな訓練もなしにムーバルを操ってアトランティス戦闘機群を撃破、剣技でも英才教育を受けてきたと思われるプラトスに対して互角に渡り合っています。
猪突猛進の性格がゆえに危機に陥ってしまうこともしばしばでしたが、逆に活路を開くこともありました。
5話の白鯨に乗り組んでの初戦闘でも他の4人を引っ張って窮地を脱する判断力・決断力を見せ、14話の南極決戦では白鯨が行動不能の状態下、ムーバルでコンドル要塞内部に侵入しての戦闘を発案、実行。
20話でアトランティス精鋭部隊に苦戦した際にも、学の力を借りつつも的確な判断で敵を撃破、突破しています。
統率力の面でも、16話で国連の無条件降伏により孤立した際にも動揺することなく、仲間たちと心を一つにして徹底抗戦の構えを貫き通しました。
また、マドーラの姉、ラ・メールが敵側に居ると分かった際も、彼女を救い出そうと仲間たちを説得しています。もし譲がリーダーだったら、当時の彼の言動からすると見捨てていてもおかしくありません。
最初はともかくとして、仲間たちからリーダーとして認められる存在に成長していったことは確かです。
そして最終決戦に生き残った後も、剣のリーダーシップは新しい世界を築く際に発揮されてゆくことでしょう。

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