仮説41:F−14について

「ムーの白鯨」に登場するメカの中で、唯一実在することがはっきりしているのが「国連軍のジェット戦闘機」として登場するグラマンF−14トムキャットです(他にも7話で戦車が登場しますが、シルエット程度で形式もはっきりしない上に砲撃一つしない内に撃破されてしまったため、性能も判断がつきませんので扱わないことにします)。

さて、F−14はアメリカ海軍で正式採用された、第四世代ジェット戦闘機に分類される艦上戦闘機です。
1973年から実戦配備され、ムー白が放送された1980年、そして設定年代の1982年において、間違いなく世界最強の戦闘機の一つでした。
アメリカ海軍からは2006年に退役しましたが、それは運用コストや使用機材統一などの都合によるもので、性能的にはその後も現役を続ける他の戦闘機に決して劣るものではありません。
その最大の特徴は高い運動性を実現する可変翼で、作中でも飛行中に作動しているのが確認できます。
しかし、世界最強の戦闘機もアトランティス軍には歯が立たず、次々と撃墜されていました。
まあ、月と地球を軽々と往復できる性能を備えている機体と比較するのは酷というものですが、あえてその性能差を見てみましょう。

F−14がアトランティス軍と交戦したのは作中で三回あります。
(1)第1話Aパート
約10機の未確認飛行物体を捉えて陸上基地からスクランブルしたF−14部隊がアトランティス小型戦闘機群と遭遇、交戦。画面上で確認できる被撃墜数は9機でした。
(2)第1話Bパート
イースター島上空にてアトランティス小型戦闘機群と遭遇、交戦。敵はAパートに登場したのと同じ、約10機の部隊と思われます。一方、F−14は5機の逆V字編隊が四つ認められたので、少なくとも20機はいました。
F−14の航続距離が3,200kmほどしかないことを考えると、南太平洋に展開していた空母から発進したものと思われます。
(3)第3話Bパート
富士噴火後も現場に留まっていたプラトス率いる部隊と交戦。画面上で確認できる被撃墜数は約20機です。
恐らく、日本近海にいた空母から発進した部隊でしょう。
他にも、第2話と第16話ではアトランティス軍の攻撃で地上撃破された機体がありました。

いずれの戦いでも、F−14はミサイルを発射するもかすり傷一つ与えることができず、一方的に全滅させられていました。
ミサイル発射の状況を見ると、ミサイルは機体から静かに離れて少し落下した後、ジェットを噴射して敵に向かっていました。この発射の特徴や画面で確認できる形状から、使用されたミサイルはスパローと判断できます。
スパローは、セミアクティブホーミング誘導方式の空対空ミサイルです。セミアクティブホーミングとは、ミサイルにはレーダーの受信器のみがあり、誘導電波は母機のレーダーに頼る方式を言います。
この誘導方式には、着弾まで目標をレーダーで捉え続けていなければ、ミサイルを敵に命中させることができないという欠点があります。そのため、画面中でもミサイル発射後にろくに回避運動も取れないままビームを受けて撃墜されるシーンが出てきます。
F−14の武装で有名なのは、200km以上の長射程を誇る空対空ミサイル・フェニックスでしょう。しかし、作中では一度も使われませんでした。
フェニックスが使われなかった理由は簡単です。元々、F−14は艦隊防空用の要撃機として開発された戦闘機で、フェニックスは艦隊に対して長距離から対艦巡航ミサイル攻撃を仕掛けてくるであろう敵に対して、さらにその射程距離外から敵攻撃機を迎撃するためのミサイルだからです。
それほど高い運動性を持たない敵を攻撃するためのミサイルですから、高い運動性を有する戦闘機には不向きなミサイルであることが使われなかった理由でしょう。
F−14には他に固定武装として20mmバルカン砲が備わっていますが、発射の機会には恵まれませんでした。
ミサイルを撃ち尽くした後はバルカン砲の出番となりますが、運動性でもアトランティス戦闘機の方が上回っていたらしく、敵を振り切ることもできずにビームの餌食となっていました。

結局のところ、ムー白作中におけるF−14は圧倒的な性能差の中で無駄に犠牲を積み重ねた、哀れな機体だったと言えるでしょう。

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