仮説37:ラウンドクロス包囲網について

20話にて宇宙に飛び出した白鯨を迎え撃った、アトランティスの阻止ライン・ラウンドクロス包囲網。
一見、ただの隕石群に見えて、実は科学長官ハイドによって計算し尽くされた鉄壁の罠でした。
まず作戦の第一段階として、不用意に突入してきた白鯨を取り囲んで動けなくしてしまいました。
ただ、この前提条件として、対象物が突入してくることが必要ですが、もし白鯨が警戒して中央突破を図らなかったらどうなっていたか、気になるところではあります。
もしかすると、相手が迂回しようとした場合は追尾して、中央突破せざるを得ないように仕向ける機能があったのかも知れません。
それはともかく、隕石群に取り囲まれた白鯨は前進も後退もできなくなってしまいました。なぜこのようなことが起きたのでしょうか?
考えられるのは、包囲網内部に何らかの重力場のようなものが形成され、そのために動けなくなってしまったという可能性です。
単なる隕石なら発生する重力は微々たるものですが、アトランティスの科学技術なら人工重力を発生させることも可能でしょう。

さて、作戦の第二段階として、白鯨がビーム攻撃で隕石群を爆破しての突破を試みたところ、隕石群の誘爆によって白鯨自身もダメージを被ることになってしまいました。
隕石群自体に爆薬が仕込んであったものと思われますが、一度の攻撃で隕石群の全てが爆発してしまわず、なおかつ一度攻撃を加えると、数回に亘って爆発が発生して対象物にダメージを与える、絶妙の距離に配置していたようです。
この対象物と隕石群の距離は、この連鎖爆発の効果のみならず、人工重力による捕獲力も含めて決定されていたことが想像されます。

ここまで考えると、この包囲網を突破する最善の策は、隕石群に突入する以前の段階でビーム攻撃によって予め破壊しておくことだということになります。
もっとも、それは結果論で、そんな罠が潜んでいるとは予想できなかったでしょうし、それに包囲される以前の隕石群は広範囲に散らばっていて、その全てを破壊するのも無理な注文ではあります。

作戦の最終段階は包囲網に白鯨を包んだまま月に落下させて葬ろうというものでした。しかし、これがハイドにとって唯一かつ最大のミスとなりました。
剣が予想した通り、包囲網が周囲360度を包んでいるからこそ、人工重力で白鯨は動けなかったものと思われます。
従って、包囲網の下半分が月面に接触して欠落した結果、人工重力が不完全となり白鯨は脱出できたものと考えられます。
とはいえ、そのためには当然ながら白鯨は月面スレスレまで急降下するのと同じ状況となり、まさしく紙一重の作戦ですが、学の的確な計算により白鯨は窮地を逃れることができました。
この月面に接触する瞬間が包囲網の唯一と言ってよい隙となることは、ハイドにも予想外だったようで、白鯨の脱出を目の当たりにして、その口からは驚愕の言葉しか出てきませんでした。

ハイドにとってこの際の最善の策は、白鯨を包囲網に閉じ込めたままにしておくことでした。
白鯨は包囲網から自力では抜け出せないのですから、そのまま放っておいてもアトランティスとしては何の支障もありません。白鯨を無視したまま地球を侵略することもできたはずです。
剣たちにしてもあのまま封印され続けたなら兵糧攻めと同じことになり、いずれは死に絶えたでしょう。
ただし、そのような持久的な作戦を採ろうとしても、ザルゴンの性格からして許さなかったでしょう。この辺りがアトランティスの限界だったのかも知れません。
もっとも、それ以前に包囲網の継続時間に限界があった可能性もありますが…。

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