仮説34:アトランティス爆撃機について

10話で初登場したアトランティスの爆撃機。
もっとも、部隊を指揮していたカイムが剣たちの攻撃に手を焼いて「爆撃機を発進させろ!」と言ったことから分かっただけで、見た目はあまり爆撃機らしくなく、何も言わなければコンドル要塞の廉価版といったイメージでした。
10話の戦闘ではムーバルの攻撃ではビクともせず、その防御力の高さを示しましたが、攻撃については前面基部に並んだ3門のビーム砲を使ったのみでした。
その威力は小型戦闘機よりは強力そうでしたが、白鯨にはさしてダメージを与えることができず、オーロラビーム砲の餌食になってあっけなくナスカ基地に落下、基地を巻き込んで爆発してしまいました。
さて、10話の画面を観る限りでは爆撃機には上述の3門のビーム砲以外に武装が見当たらず、どこが爆撃機? という感じでした。
機体サイズは白鯨などとの比較からすると全幅50m、全高30〜40mといったところで、猛禽が翼を開いたような機体基部近く、左右に2基ずつ4基の可動式噴射ノズルが設置されており、このノズルの方向を変えることで機体の向きや進行方向を変えていたようです。その分、運動性や速度では他の機体にかなり見劣りするようでした。
まあ、防御力は比較的高そうですし、機体自体が大きいので指揮官機として優れているとは思いますが、このときはナスカ基地があったわけですし、特に大型の指揮官機を用意する必要性はなさそうでした。
対白鯨に打撃力のある機体を用意したとも考えられましたが、実戦での攻撃力はお世辞にも効果的とは言い難いものでした。
しかも、ビーム砲は機体前面にしかなく、なおかつその可動範囲はかなり限られていたようで、背後に回った白鯨を攻撃するには機体を旋回させる必要があり、あまり有効な攻撃ができていないようでした。
いずれにしても、この爆撃機はそのデビューにおいてあまり恵まれていたとは言い難いようです。
ただ、これはカイムの用兵の拙さによるもので、これをもって爆撃機の性能を評価するのは酷というものです。

爆撃機がその真価を発揮したのは物語終盤、白鯨が宇宙へ飛び出し、アトランティス本国の部隊と交戦した21話以降のことです。
ここで初めて、爆撃機は機体下部に設置されていた大口径の熱線ビーム砲を使用しました。
その威力は画面を観る限り、小型戦闘機などとは比較にならず、重戦闘機の大口径ビームをも凌ぐ破壊力を持っているようです。
中でも、大群で白鯨にビームの雨を撃ち込む戦法は決して侮れません。
ただ、機体の構造上、目標の上空に位置しなければ攻撃できないというのが爆撃機にとって最大のネックです。
しかも、敏捷性に欠けるために高速で移動する目標を眼下に捕捉するのは極めて難しくなります。
ですから、10話のように1対1の戦いでは、その真価を発揮することなく撃破されてしまったのは頷けます。
その一方、戦闘機群を交えての乱戦では白鯨を捕捉して自慢の熱線ビームを撃ち込む機会も出てきます。
とはいえ、その大口径ビームをもってしても白鯨に対してはまだまだ力不足の感は否めませんでしたが……。

ただ、この機体の元々の開発コンセプトは、地上の目標に対して打撃を与えることにあると思われます。
小型戦闘機でも地上攻撃は可能ですが、より大きな破壊効果、例えば地上に見えている目標だけでなく地下のシェルターまで根こそぎ破壊し尽すことを狙ったものでしょう。
それを移動目標への攻撃に投入したのがそもそもの間違いだったと思われます。
その真価を遺憾なく発揮したのが、25話における海底神殿への攻撃でした。
大群で編隊を組んだローラーシフトにより、大口径ビームを隙間なく撃ち込む絨毯爆撃。この攻撃により、3万年の時を越えて保存されてきたムーの貴重な神殿は完膚なきまでに破壊されてしまいました。
このような、正確な位置が特定できない目標や広範囲に対する殲滅攻撃がこの爆撃機の真骨頂です。
逆に言えば、このような使い方のできる局面に恵まれなかったことが、爆撃機にとっての不幸であったとも言えます。

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