仮説29:ミューについて

白鯨のマスコット的存在であるミュー。
初登場の際は皆から「エンジェル」とか「ユニコーン」とか勝手なことを言われ、剣に至っては「ぶっこわれのキューピット」などと呼ばれていましたが、その正体について作中ではついに最後まで触れられることはありませんでした。
そもそも、ミューは3万年前から現在と変わらない姿で生活していました。
ということは、ミューは不老不死の存在か、ラ・ムーやマドーラのようにサイボーグ化されていたか、あるいはそれに準ずる3万年の時を越えるに足る肉体を生まれながらに持っていたということになります。
では、彼の正体は何なのでしょうか?
11話のバミューダ・トライアングルの危機に対する反応や14話のオリハルコンに対する恐れの感情を見ると、人間と動物の中間的な存在のように思えます。
あるいは設定に書かれていたように、「妖精」や「天使」だったのでしょうか?
もっとも、「妖精」や「天使」と言っても、必ずしも一般的にイメージされるような超自然的存在とは限りません。
例えば、かつて人類とは違う知的生命体が地上に存在していて、それが滅び去った現代に「妖精」や「天使」といった伝承として伝わっている、というような可能性は否定できません。
実際、3万年前の世界の回想シーンでは信の前世であるシンムが接していた動物たちは現在のそれとは姿が微妙に異なり、中にはユニコーンそのものまで居ました。
ミューもそういう、今や伝説として語られる存在となった、ムー大陸の住人の一人だったのかも知れません。

ただ、気になるのはミューが翼を持って空を飛ぶ能力があっても、全く羽ばたいていない点です。
実際、ミューの翼は小さすぎてその体を浮かせるだけの揚力を生み出すのは無理そうです。
それに、設定資料を見ると『翼をパタパタしない』とはっきり書かれていて、設定上でもミューの翼は単なる飾りに過ぎず、飛行原理は別にあることは間違いありません。
この正体不明の飛行原理について思い当たるのが、ムー側の飛行機械はいずれも推進機関らしきものが見当たらないという点です。
もしミューの飛行原理が白鯨やムーバルと同じものであったとするなら、ミューは飛行装置を体内に内蔵したアンドロイドだったという想像も可能です。
ただし、5話の描写からするとミューは食事を摂ることはしていたようですので、アンドロイドと言うよりもサイボーグ、又は人造生物であったのかも知れません。
あるいは逆に、ミューの持つ飛行原理を応用したのがムーの飛行装置だった、という可能性もあります。

ではミューのムーにおける役割は何なのでしょうか?
剣たちの精神を3万年後に飛ばしたことも、マドーラやラ・ムー自身がサイボーグ化によって3万年の時を越えたことも、目的は蘇るアトランティスに対抗することに集約されます。
ムー大陸に暮らしていた多くの住人(人とは限らないが)の中で、あえてミューを現代まで連れてきたのは、彼がアトランティスとの戦いにおいて必要な存在であったことを意味します。
5話でマドーラは「白鯨のことは何でもミューが知っています」と言っていましたが、特に剣たちが白鯨の扱いに不慣れな物語初期においては、ガイドとしての役割は大きかったようです。
しかし、単なるガイド役ならマドーラにも充分果たせたはずです。
ここで注目すべきだと思われるのは、剣たちが白鯨に乗り込んだ際は必ずミューも同乗している点です。
「白鯨の中にいつも居るマスコット的存在」であれば当然とも思えますが、通常のみではなく、白鯨が失踪したときは大抵、ミューも一緒にいなくなっています。
白鯨がコンドル要塞に敗れて行方不明になった7話然り、深手を負って「鯨の墓場」へ向かった19話もそうです。
このことは、ミューと白鯨が不可分な存在であったことを強く示唆します。
あくまで想像ですが、剣たちが白鯨を操る際にカプセル内の操縦系の一環をなす、生体装置の一種がミューだったのではないか、という気がします。
ただ、ミューと白鯨の不可分性が崩れた例として15話と最終話があります。
もっとも、15話ではラ・ムーが自分とマドーラだけで最後の戦いに臨むための方便として剣たちを元の生活に戻そうとしたという背景があり、最終話は言わずもがな、ラ・ムーが全ての戦いを終えて去っていった後のことでした。
つまりこの時には、ラ・ムーがミューを白鯨に縛った生体装置としての枷を外したということでしょう。
もしこの想像が正しいとすると、ミューの正体はムーの技術が生み出した人造生物、ということになります。
もっとも、白鯨は元々ムーの守護神だったわけで、ミューの生体装置としての位置付けはあくまで白鯨を戦闘に用いることになった結果として発生したものと思われます。
本来は人々と白鯨を繋ぐ御子的な存在だったと考えるのが妥当でしょう。

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