仮説28:ラ・メールについて

ラ・ムーの娘として生まれ、3万年前にアトランティスの人質となったマドーラの双子の姉、ラ・メール。
古来より一国の指導者の近親者が他国との同盟関係の証として人質とされる例は枚挙にいとまがなく、ある意味、珍しくもないことです。
しかし、一つだけあまり例を見ないのは、ラ・メール自身が人質であることを全く知らなかったという点でしょう。
両国の関係や周囲にどういった人々が居たかにもよるでしょうが、普通は人質として他国へ差し出された人物というのは、周りに居る異国(敵国と言い換えても良い)の人々から後ろ指を指され、蔑まれ、その人格形成に影を落とすことが多いのではないかと考えられます。
当時のアトランティスとムーの関係を考えるに、ますますその懸念は大きくなります。
ラ・メールの幼少時、傍に居たと思われる人物を想定すると、プラトスの存在が救いになったとは思いますが、他にはあまり好影響を与える人物に恵まれたとは考え難いです。
しかし、ラ・メールは軍事国家という環境に育ったゆえか攻撃的な性質はあるものの、基本的には真っ直ぐな性格をしているように思えます。
これは上述のプラトスの存在が大きかったとも言えますが、プラトスとラ・メールの会話によればコンドラは親のないラ・メールを「我が子のように育ててくれた」とのことでした。コンドラの性格からすると想像し難いですが…。
ただ、ラ・メール自身、コンドラに出生の秘密を告げられた際、「アトランティス人として誇りを持って生きてきた」と言い切っています。
それに11話で剣と出会ったとき、ラ・メールは親衛隊隊員と名乗っていました。
親衛隊と言えば、帝国に対する忠誠心の篤い隊員で構成される、言わば精鋭部隊。その親衛隊に人質として来た人物を入れるなど普通は考えられません。
いかにコンドラの口添えがあったとしても、ラ・メールがラ・ムーの娘だと知っていれば、まず周囲が受け入れはしなかったでしょう。
だから、ラ・メールの出生の秘密はザルゴンとコンドラ以外は誰も知らなかったのでしょう。
(7話でラ・メールがプラトスに付いて地球に行こうとした際のゴルゴスのそぶりからすると、もしかしたら彼は知っていたのでは、という気はします。確証はありませんが)
そこまで秘密を守ったのは、いざというときのためにラ・ムーに対する刺客として育てようとしたのではないでしょうか。
あるいは、プラトスの存在がラ・メールの命を救ったという可能性も考えられなくはありません。
ザルゴンはともかく、コンドラは我が子に対する情愛は持っていたようでしたから、例えばプラトスがお気に入りのラ・メールを傍に置いておきたいと駄々をこね、その望みを叶えるために上述の口実を設けてザルゴンを説き伏せた…とか。
ま、当時のアトランティス側の状況は描かれていないので、あくまで想像ですが。

しかし、いかに緘口令を敷いたとしても、そう隠し通せるものでしょうか? 人の口に戸は立てられないものです。
この謎を解く鍵は、17話回想に出てきたザルゴンとラ・ムーの和平会談にありそうです。
アトランティスから提示された講和文書に目を通したラ・ムーは、全ての条件を呑むと回答しました。
しかし、ラ・メールの件をコンドラが持ち出したのはその後です。
当然、ラ・メールを人質に差し出すことは文書に書かれていません。つまり、ラ・メールの件はアトランティス・ムー両国の人民には知らされなかった可能性があるのです。
ほとんどの人民が知らなければ、緘口令を徹底させるのは容易だったはずです。
気になるのは和平会談の際にアトランティス側には傍に周囲を警護する兵士たちがいた点ですが…秘密を守るためにあえて激戦地に送って全て戦死するよう仕向けたか…そこまでしたかどうかは正直疑問ですが…。
一方、生き別れとなったマドーラの場合は周囲の人々が話さなかったために姉の存在を知らないまま成長したのでしょう。

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