仮説27:アトランティス反乱軍について

「ムーの白鯨」24話で勃発したアトランティスの反乱。今回はその背景について考察してみましょう。
そもそもの発端は、23話におけるプラトスの反逆でした。
アトランティス大陸が地球への帰還を果たし、全地球支配も時間の問題となったあの日、ザルゴンはプラトスにラ・メールの処刑を命じました。ザルゴンの意図はプラトスのアトランティス帝国への、つまるところ自分に対する忠誠を試そうとすることにあったのでしょう。
結果から言うと、プラトスはそれを拒否してラ・メールを逃がし、そのために反逆者として捕らえられることになったわけです。
そのプラトスを救ったのは、ラ・メールと、そしてプラトスを慕う多くの若手兵士たちでした。

決起した兵士たちの言葉を聞くと、プラトスの反逆がいかに大きな衝撃を与えていたかがよく分かります。
帝王ザルゴンの独裁政権下にあったアトランティス帝国。その中で、帝王に意見するなど誰にもあり得なかったはずです。
それまでにも、プラトスはザルゴンに意見して怒りを買っていました。ただ、それは帝国上層部における出来事で、一般兵士には与り知らぬことだったはずです。
また、内輪の話だったからこそ、その事件はザルゴンの胸三寸に納めておくこともできたのでしょう。
しかし、23話における反逆は違います。
いかに皇子といえど、帝王に公然と反逆するなど、一般兵士たちにとっては革命的な出来事だったはずです。
そしてそれゆえにこそ、ザルゴンには人民に対して示しをつけるためにもプラトスを許すことはできなかったということが言えます。

とにかく、この事件は帝国内を大きく揺るがしました。
少なからぬ数の兵士たちが立ち上がったことがそれを証明しています。
短時間に同志を集められたのはプラトスの人徳もあったでしょうが、親衛隊隊員であったラ・メールの人脈も無視できません。
見方を変えれば、ザルゴンによる恐怖政治はもはや限界に来ていたと見ることもできます。
帝国の身分制度について、作中では明らかにされていませんが、決起したのは恐らく平民出身の兵士たちだったと思われます。
集結した兵士たちの台詞からも、戦場で消耗品として扱われる境遇に、不満がくすぶっていたことが見て取れます。
そんな状況を打破し、自分たちの権利を護るために決起したというのがこの反乱の本質だと見るべきでしょう。
そもそも、アトランティスの人民は選民教育を受けているはずで、プラトスが抱いていた『地球の人々と真の平和を築く』というような崇高な理念を理解していた者などほとんどいなかったと考えるべきです。
だから、もしこの反乱が成功していたとしても、その時点でプラトスが健在でなければ、捕らえられ強制労働に駆り立てられていた人々は解放されなかったでしょう。

結局、反乱はプラトスが倒れたことで事実上失敗に終わります。
反乱軍のその後の消長は物語の中で触れられていませんが、プラトスという精神的支柱を失って鎮圧されたと考えるのが自然です。
しかし、組織的戦闘は終結したとしても、その影響は帝国全土に大きな影響を残していたと考えられます。
もしゲリラ的な抗戦が帝国全土で続いていたとしても、ザルゴンの怒りに触れることを恐れて誰もその事実を告げなかったはずです。
25話で白鯨が一気に帝国中枢へ突入できたのも、海底神殿を破壊され、言わば背水の陣を敷いたことによる精神面の強さもさることながら、軍備体勢の乱れによってアトランティス帝国の組織的戦闘能力が低下していたことを示しているのかも知れません。

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