仮説26:予知能力について

「ムーの白鯨」の作中、特に物語前半で度々登場する予知能力。
作中でこの能力を操るキャラとしてはマドーラと麗、そしてラ・ムーが居ます。
物語を見る限りでは、ラ・ムーや麗は元々予知能力を持っていたようですが、マドーラの場合はどうも違うようです。
その根拠は、6話でラ・ムーがマドーラに、
「お前の予知能力の源はワシから発している」
と語っている点です。
詳細は語られませんでしたが、恐らくラ・ムーとマドーラは意識を共有していたものと思われます。
そしてラ・ムーは予知した未来を、マドーラを介して語らせていたのでしょう。
その後、マドーラが未来予知できなくなったのは、剣との触れ合いの中で心を取り戻してしまったために、ラ・ムーとの意識の共有が不完全になったためと思われます。

さて、未来を知ることのできる一見便利そうなこの能力ですが、必ずしも万能というわけではないようです。
一例を挙げれば、25話で剣たちはアトランティス部隊の奇襲を許し、そのために譲が重傷を負うという結果を招きました。
このときはプラトスとラ・メールの死を悼んでいる最中だったからとも言えますが、そのことはつまり、他に意識の集中している対象があるときは未来予知ができないことの証左でもあります。
しかし、9話ではオリハルコンのある場所は麗にもラ・ムーにも分からないとのことでした。
このことから、予知能力とは言っても何でもかんでも予知できるわけではないということが分かります。
考えてみれば全てを予知できるなら、極論すると物語開始時点で戦いの結末まで分かってしまうことになりますから、それでははっきり言ってお話になりません。
これは未来予知が登場する作品には普遍的に見られる現象で、作中における予知能力の扱いには大概、下記のような限定条件のあることが多いものです。

・戦いの終結など、あまり遠い未来までは予知できない。
・前触れもなく情景が脳裏に浮かぶなど、自分でコントロールできない。
・占いなど、あいまいな情報であることが多い。

10話で麗が、テニスプレーヤーだった過去に絡めて自身の能力について語った内容からも、この限定条件が見えてきます。
「試合中、緊張すればするほど不思議に勘は冴え、相手の動きが見えた」
つまり意識を集中することで、少し先の未来を見通す能力ということです。
特に意識せずに突然未来を感じ取ったことも何回かありましたが、これは麗自身が能力を完全に使いこなしていたわけではなかったのかも知れません。
作中で未来予知した際も、『ふっとそんな気がした』『よくは分からないけど』『恐ろしい何かが』と、あいまいな内容ばかりです。
また、20話で瞬間移動を繰り返す敵艦の位置を見極める際も、剣が頼ったのは麗の予知能力ではなく学のコンピュータ分析でした。
このことは麗の能力が敵の移動位置をピンポイントで割り出せるほどの精度がなかったことを示しています。
いずれにしても、麗が予知したのは数時間後かせいぜい当日起こる事実ばかりで、あまり遠大な未来予知はできなかったようです。この辺に能力者の力量差が現れているのかも知れません。
ラ・ムーが3万年もの未来にアトランティスが復活すると予知できた点についても、ラ・ムーが持つ予知能力の強大さを示しているとも考えられます。
しかし一方で、ラ・ムーはオリハルコンの所在地を予知することはできませんでした。これはどういうことでしょうか?
もしかすると能力差というより、これは予知能力の本質に関わる問題かも知れません。
例えて言えば、予知能力というのはRPGのストーリー分岐点までを知る能力、ということができるのではないでしょうか。
つまり、どちらに転ぶか分からない時点から更に先の未来までは見通せないということです。
例えば敵がどこに来襲するかというような情報は、こちらがどう動こうが基本的に変わらないはずです。
ところが、オリハルコンがどこにあるかというような情報は、それをムー・アトランティスどちらが押さえるかでその後の物語が大きく変わってしまいます。
このような更に先の未来を改変しかねない未来情報は読めない、というより確定していないために予知すべき未来がまだ存在していないと理解すべきなのかも知れません。

戻る

inserted by FC2 system