仮説25:国連、及び国連軍について

「ムーの白鯨」において、アトランティスの侵攻に果敢に立ち向かい、完膚なきまでに叩きのめされていた国連軍。
大抵のSF作品で敵の強大さを示すために登場する、典型的なやられキャラです(笑)。

さて、報道などを見れば大体分かることですが、「国連」というものは国際機関であって、国家の上に立って絶対的な権限を持つものではありません。
それは「国連」の成り立ちが、第二次世界大戦の連合国に端を発しているのが一因と考えられます。
「国連軍」にしても、そういう名の常備軍が現実にあるわけではありませんし、組織されたこともありません。しかし、言葉自体は存在します。
それを定義付けるなら、『国連の安全保障理事会の要請に応じて、協定を結んだ国連加盟国が提供する軍隊』ということになります。この安保理の要請に応じて提供されていない点で、「国連軍」は「多国籍軍」と異なります。
もっとも、あくまでフィクションですから「国連軍」が存在する世界の話と考えることもできますが…しかし2話中盤でアトランティスの降伏勧告を受けて行われた国連会議を見る限り、ムー白世界でも「国連」の実態は現実のそれと大差ないように見受けられます。
なのに1話後半でイースター島上空に飛来したジェット戦闘機群を見て譲は、
「国連軍のジェット戦闘機だ」
と言っています。
もしかすると、1話冒頭で頻発する異常現象に対処するために、史上初の「国連軍」が編成されていたのかも知れません。

何度か登場するジェット戦闘機は間違いなくアメリカ海軍のF-14トムキャットですが、国籍マークすら付けていないところを見ると、アメリカ軍ではなく国連軍として出撃していたのかも知れません。
とは言え、元々の作戦行動域から大きく逸脱した場所に展開されることは考え難いですから、登場したのはアメリカ本土の部隊(1話中盤)や南太平洋で作戦行動中の空母部隊(1話後半)、在日アメリカ軍(3話後半)というのが妥当な線でしょう。
7話前半で登場した戦車部隊は、場所から考えてエジプトかその周辺国の部隊と考えられます。
10話では学がキャッチした「国連軍情報」として、「敵の編隊は防空ミサイル網を突破してペルーへ向かっている」という台詞があり、「国連軍」が存在していることを示しています。
しかし、11話で同様に学がキャッチした情報は、「アメリカの防空ミサイル網を突破して大西洋へ向かった」というもので、ここではアメリカ単独の軍隊の存在を感じさせられます。
思うに、アメリカなどの大国は自前の軍で護っていたが、南米のように余力のない地域については国連軍がサポートしていたのではないでしょうか。
作中で唯一、「国連軍」として出撃したのがはっきりしているのは、16話後半、剣たちに降伏を迫った大艦隊で、そのマストには国連旗が翻っていました。恐らくこの時点で、アトランティスの攻撃により各国はもはや国としての機構を維持できず、軍の組織を「国連軍」に統合せざるを得ない状況だったのかも知れません。
ところで、19話ではアトランティスから放たれたオリハルコンパワービームに対して、敵わないまでも迎撃ミサイルを発射しています。
16話で国連は無条件降伏したのですが…武装解除されなかったのか、それとも戦力を秘匿していたのか…?
まあ、アトランティスにしてみれば国連軍の軍備など放っておいてもどうということはないと考えたのかも知れませんが。
なお、アトランティスに全く歯が立たなかった国連軍ですが、それなりの科学技術は持っていたようです。
16話中盤、アトランティスの大部隊が地球に乗り込む際、バリアを張りつつ大気圏に突入する旗艦の傍に、決して小さくはない宇宙ステーションらしきものが浮いていました。
デザインからしてアトランティスのメカとは違っていましたので地球側のものと思われますが、国連にしろアメリカにしろ、これだけのものを造り出せるということは現代以上の科学技術を作中の地球は持っていたということになります。
そしてその科学技術をもってしても全く対抗できないアトランティスの強大さを示すことにもなるのですが…。

分からないのは国連や国連軍がムー側勢力をどう見ていたのかです。
国連軍と剣たちが何がしかの協力をしたようなエピソードは作中では語られませんでした。
ただ、防空ミサイル網にムーバルや白鯨が引っかかったり戦闘機に迎撃された形跡はありません。
もしかすると詳細が描かれなかっただけで、ある種の協力関係はあったのかも知れません。例えばどの国の領空・領海でも自由に行き来できる特権が与えられていたというような…。
それなら、ムーバルを大量生産してアトランティスに対抗できる部隊を創設するといった積極的な協力があってもよかったのではないかと思いますが…各国の利害が対立してうまくいかなかったのかも知れません。あるいは、ムーの超技術を一般に開放することによる弊害を恐れて、ラ・ムーがそれを拒否した可能性も考えられます。
いずれにしろ、国連の中でムー側勢力の位置付けは同盟軍、あるいは独立遊撃部隊的なものだったと思われます。

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