仮説21:ヒマラヤの古代図書館について

「ムーの白鯨」12話の舞台となったヒマラヤ山中に眠る古代図書館。他の舞台がそれなりに伝説や事実に基づいた場所であったのに対して、ここだけはスタッフの完全な創作と思われます。
ま、それはともかく…この古代図書館の由来については作中で学が完璧なまでの推論を行っています。

・入り口にコンドルが彫られていることから、アトランティス人の手によるものと考えられる。
・アトランティスの探索部隊が現れていないことから、地球に残された子孫が造ったもので、今のアトランティス人はこの場所を知らないと思われる。
・取り残されたアトランティス人は、恐らくいつか戻って来る仲間のために、自分たちの栄光を記した物を集め保管したのであろう。

この推論に異議を差し挟む余地は全くありませんが、一つだけ欠けている視点があるとすれば、なぜ人里離れた山奥に築かれたかということでしょう。
捜索中に信の、
「あるとすればこんな高い所じゃなくて麓の方じゃないのか?」
という問いに対して学は、
「麓にあればもう発見されてるはずでしょう」
と答えています。
これは古代図書館がこれまで発見されなかった原因を説明してはいますが、秘境に建設された理由は明らかにされていません。
想像するに、それはアトランティス大陸消滅後、他の大陸に渡っていて祖国なき民となった人々の運命を象徴しているように思えます。
破局前にいち早く人民を脱出させていたムーと違って、本国を、ひいては力の源を突然失ってしまったアトランティスの人々は、少数民族へと成り下がってしまったのでしょう。
それでなくても、アトランティス人はムーの人々から怨まれていたに違いありません。
となれば、彼らは必然的に山奥などの人里離れた辺境に閉鎖的な集落を築かざるを得なかったはずです。まぁ、アトランティスは「山の民」だったとラ・ムーが語っていますので、山中に住むことは彼らにとってそれほど苦でもなかったかも知れませんが。
とはいえ、実際に住んだのはもっと麓の方だったでしょうが、彼らも自衛を考えてアトランティス人であることは隠して生活していたはずです。
しかし、その一方でムーを劣等種族と教えられ、選民意識を植え付けられていたであろうアトランティスの民です。偉大な帝国の子孫であるという誇りを絶やさぬよう、そしてそれを余所者には悟られないように人里離れた山中に隠れ里のように図書館を築いたのでしょう。
それならば、作中で剣が疑問を呈したように下に全く道がなかった理由も頷けます。
そして彼ら自身がそこへ行く手段―垂直離着陸のできる移動装置―を何らかの理由で失った時、図書館は伝説の彼方へと消え去ってしまったのでしょう。
あるいは他にもアトランティス人の子孫が残した古代図書館があったのかも知れませんが、それらは戦乱で失われてしまったのでしょう。その最たるものが、かの有名なアレクサンドリアの古代図書館ではなかったか、という気がします。
作中では、ヒマラヤの古代図書館で「ピリ・レイス地図」の原図なるものが発見されますが、本物の「ピリ・レイス地図」は一説によるとアレクサンドリアの古代図書館にあった地図を元にしたのではないかとも言われていますから、それほど突飛な想像ではないと思います。

分からないのは作中に出てきた古代竜です。
想像するに、余所者を近づけないために飼われていたというわけではなく、恐らくは勝手に住み着いていたものと思われます。
いつ頃住み着いたのかは定かではありませんが、もしかするとアトランティス人が図書館へ行けなくなった理由があの古代竜にあったのかも知れません。
もう一つ気になるのは、洞窟内がヒカリゴケに覆われていたのに、古代図書館の蔵書や資料陳列室に展示されていた武器が全くと言って良いくらい劣化していなかった点ですが…やはりアトランティスならではの保存技術の賜物ということでしょう。

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