仮説17:ノアの箱舟伝説について

「ムーの白鯨」9話の舞台となったトルコ・アララト山。旧約聖書における『ノアの箱舟伝説』の地ですが、作中では背景設定として触れられただけでした。しかし、実際問題として『ノアの箱舟伝説』と「ムーの白鯨」との関わりはどの程度のものなのでしょうか?

世界各地にある洪水伝説の代表格と言うべき『ノアの箱舟伝説』。
そもそもアララト山麓が舞台となったのは、3万年前のムー海没・アトランティス消滅の名残が洪水伝説に残されているとの考えから、オリハルコンの手掛かりを求めてのことでした。
大体、伝説というのは長く語り継がれていくうちに誇張が加わっていくものでしょうし、水害の光景など世界中どこで起きても描写は似たり寄ったりでしょうから、短絡的にムー・アトランティスと結びつけてしまうのはいささか乱暴な論拠という気もします。
それでも、二つの大陸が地上から姿を消すなどという大異変が起これば、世界各地を天変地異が襲ったことは想像に難くありません。
ただ、いかに想像を絶する大洪水が起きたとしても、標高5,000mを超える山が水没するようなことはあり得ません。作中では山頂近くに『ノアの箱舟の跡』なる窪みが出てきましたが、この辺はあえて突っ込まないことにして…まあ、あくまで伝説ならではの誇張が入っていると考えるべきでしょう。
とは言え、何らかの事実を反映した伝説ではあると思われます。
実際、アララト山には作中に出てきたよりずっと麓ではあるものの、科学的考察はともかくとして『ノアの箱舟跡』と言われる船型地形があると言いますし、また、古くは12世紀頃から幾度となく行われた探検でも『箱舟発見』の報告は枚挙にいとまがありません。
しかし、アララト山はトルコとイラン・アルメニア(ムー白本放送当時はソ連)国境近くの民族紛争地域にあるという事情もあって入山は厳しく制限され、事実関係の確認は未だになされていない状態です。

さてここで更に踏み込んで、作中で村人が剣とマドーラに語った『光る矢』の伝説について考察してみましょう。
曰く、『アララト山から水が引いた時、空飛ぶ光の矢がこの地に降りた』。
二人はオリハルコンの事かと色めき立ちますが、それは3万年前の世界で消息を絶ったケインのムーバルでした。
しかしこの話、ストーリーとは矛盾する部分があります。
というのは、アララト山を襲った大洪水がムー・アトランティス消滅の余波によるものだとすれば、ケインはそれ以前に消息を絶っているからです。
その理由としては二通りの可能性が考えられます。
ひとつは伝説ならではの時系列の混乱が起きた場合。
つまり、実際にムーバルが降り立ったのは大洪水の前だったが、長く語り継がれる間に「大洪水の後」と誤って伝わったという可能性です。
その後、大洪水でムーバルは土砂に埋め尽くされる事になりますが、地元の人々によって掘り出されて祭られたのではないでしょうか? その跡が作中に出てきた洞窟だったと考える事もできます。
もうひとつ考えられるのは直接アララト山に辿り着かなかった場合。
ケインは何らかの理由でムーに帰ることができず、孤独な戦いを続ける内に破局が起こったという可能性です。
そして、天変地異の中でケインがやっと見つけた着陸場所がアララト山麓だった、という事になります。
しかし、それではなぜムーバルが洞窟の奥に置かれていたのでしょうか? しかもその入り口はムーバルを入れる事などできそうにない狭いものでした。
ただ、ムーバルの置かれていた場所は洞窟の奥にしては天井から光が差し込んでいて、それもまるで巡礼ができるかのように通路まで設えられていて、何やら人工的な感じがします。
もしかすると、余所者に触れられないよう岩を積み上げて隠したのかも知れません。
詳細は地元の人々にも忘れ去られていたようですが、小説版によれば当地で偉大な指導者となったとされるケインの出自を示す場所だけに、「聖地」とされるのは自然な事と言えるでしょう。

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