仮説13:ザルゴンについて

「ムーの白鯨」における最大の悪役、アトランティスの帝王・ザルゴン。部下はおろか、家族まで平気で殺してしまう極悪人。
アトランティスはムーと違って明確な身分制度が確立しているようでしたから、ザルゴンは生まれついての帝王であったと考えられます。
もっとも、下克上という可能性もありますし、例えそうでないとしても王権を巡る争いというのは凄まじいものと予想されますから、ザルゴンが帝王の地位を固めるまでは相当の闘争を経ていると思われます。
さて、王と一口に言ってもただのお飾りから歴史に名を残す偉大な名君まで色々でしょうが、ザルゴンの場合は悪名の方が未来永劫まで残りそうです(汗)。
しかし、絶大なカリスマ性を持った人物ではあったようです。少なくとも、生まれつきの身分や暴力的恐怖だけでは人民をあれだけ引き付けることはできないでしょう。
もしかすると、帝位に就いた頃はそれなりに名君と言える人物だったのかも知れません。

ところで、設定を見ていて疑問に思うのは、なぜ物語前半でザルゴンが永眠状態だったのかです。
「オリハルコンを奪われたことで魔力を失い…」などと設定にはありますが、コンドラ、ゴルゴス、プラトスら家族やその他の兵士達は問題なく活動しています。オリハルコンがザルゴンだけに作用する何かがあるのでしょうか?
帝王などという肩書きや立場でオリハルコンの作用が変わるなんてことはちょっと考え難いです。
ここでちょっと想像をたくましくしてみますと、ザルゴンが独裁者であることが手掛かりになりそうです。
古今東西、絶対権力を手にした人間が次に望むのは、その権勢を永遠のものにする不老不死と相場は決まっています。
そして、ザルゴンはオリハルコンによってそれを実現していたのではないでしょうか?
だとすれば、それゆえにオリハルコンを失った時、ザルゴンは活動できなくなったと考えることができます。

そう考えてみると、ザルゴンのあの残虐性もある程度説明がつきます。
歴史を紐解けば実の親子が殺し合うという例はそう珍しいことでもありませんが、不老不死を得た者というのはもしかすると人間として、というより生物が必ず持っている、自分の子孫を残そうとする本能ともいうべき情念を失ってしまうのかも知れません。
反逆したプラトスを捕らえたザルゴンは24話で、
「つまらぬ考えさえ起こさねばワシの後継ぎとして、やがてはアトランティスの帝王にもなれたお前なのに…」
などと言っていました。
しかしこの仮説が正しければ、ザルゴンはその帝王の座を初めから誰にも譲り渡す気などなかったことになります。
上述のザルゴンの言動は単に自分に反逆したプラトスをいたぶるためのものだったのでしょう。

さて、ゴルゴスとプラトスが生身であることを考えれば、ザルゴンが不老不死の肉体を得たのはそれほど昔のことではないだろうと想像できます。
ラ・ムーは3万年前の回想で「アトランティス帝国と我がムーは100年に亘る長い戦争状態にあった」と語っていますが、そうだとすればザルゴンが戦争を始めたというわけではないことになります。
また、一代で大帝国を築き上げたわけではないとしても、「オリハルコンの力をもって一段と強力な軍事国家を創り上げていった」ということから、ザルゴンがアトランティスの軍事力を強化していったのは確かなようです。
もしかすると、戦争初期は小競り合い程度だったのが、ザルゴンの代で一気に全面戦争に突入していったのかも知れません。

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