仮説12:ラ・ムーについて

ムー白の作品世界において「預言者」「指導者」とされるラ・ムー。しかし、設定上はともかくとして作中では「帝王」とは言われていません。そもそも、「ムー大陸」とは呼ばれても「ムー帝国」と呼ばれることはなかったのですが…。
厳密には11話でゴルゴスが「ムー帝国」と言っています。しかし、ムー側では誰一人「帝国」とは言っていません。ゴルゴスの場合、自国が「帝国」であることから言い間違えた可能性もあります。
さて、「ラ・ムー」という名称自体、「ムー」の前に定冠詞と思われる「ラ」がついていて、個人の名ではなく肩書き―役職名か世襲の名であったろうと想像できます。
簡単に言えば「ラ・ムー」とは政治家であると同時に宗教指導者でもある最高位人物を示す言葉だと考えられます。今でも政治のことを「まつりごと」と呼んだりするように、古代において政治と宗教はイコールなところがありますから、その辺の区別というのはそれほど厳密に考える必要はないでしょう。

では、ラ・ムーはいかにして「ラ・ムー」となるのでしょうか?
3万年前の描写を見る限りでは、ムーの身分制度がどうなっているのかはっきりしません。従ってラ・ムーが世襲制なのか人民の間から選ばれるのかわかりません。
ただ、ラ・ムー足り得るには下記のような条件を挙げることができると思います。

(1)神の代弁者となり得る人格者であること。
まず、最低限必要な条件がこれでしょう。宗教指導者なら当然として、仮に世襲のものであっても、尊敬を集めるだけの人徳がなければ人民はついてきません。
権威付けだけで人民を従えさせることもできるかも知れませんが、作中のラ・ムーはその地位などとは関係なく、人望を集めていたように見えました。

(2)一般人民には成し得ない超能力を持つこと。
3万年前、アトランティスを異次元へ飛ばしたパワーがこの最たるものでしょう。こればっかりは誰でもできるというわけにはいきません。
言わばラ・グリルの力を最大限に引き出すことができる能力を持つことが条件になります。
ただし、これは国家存亡の危機に対する最終兵器的なものですから、能力を実際に発動したのは最後のラ・ムーが唯一と考えられます。

(3)強力なリーダーシップを持つこと。
政治家でもあるその立場を考えると、人望だけでは務まりません。きれい事では済まされない、国の舵取りを求められるわけですから、それは当然のことです。
回想シーンでは戦時中ですから、ラ・ムーの内政についての政治手腕を見ることはできませんでした。
これに対して、外交に関する能力はあまり高くなかったようです。それを端的に示すのが17話の回想シーン、ラ・メールを人質に取られるくだりです。
この時の交渉内容については深く触れられていないのではっきり言えませんが、どうもラ・ムーは一方的に不利な条件を押し付けられてしまったように見えます。

ラ・ムーを選ぶに当たって必要とされるであろう条件を挙げてみて、最も重要視されるのは(2)の「超能力」だっただろうと考えられます。
人格や政治力を軽視するというわけではありませんが、全てを兼ね備えた人物が必ずしも望めない以上、求める能力に優先順位を付けることはやむを得ません。
その結果として、代々政治能力に優れた人物が必ずしも「ラ・ムー」に選ばれないという状況を生んでいた可能性はあります。
しかしそもそも、この時代の外交相手はアトランティスしかいないはずで、しかもそのアトランティスとは100年に亘る長い戦争状態にあったわけですから、ラ・ムーに限らず外交のノウハウなど誰も持っていなかったのでしょう。
それだけの長きに亘る戦争となれば、小手先の交渉では和解することはできなかったでしょうから、これをもってラ・ムーの政治手腕を評価するのは酷というものかも知れません。
また、100年も戦争が続いていたということは開戦時のラ・ムーは3〜5代は前と考えられますから、戦争責任は少なくとも現行ラ・ムーにはないということは言えます。

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